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贈与税の配偶者控除は、婚姻期間が20年以上の夫婦が対象!要件、申告方法、必要書類を解説
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用の不動産もしくは居住用不動産を得るための金銭の贈与が行われた場合に最高2,110万円(基礎控除含む)が控除できる「贈与税の配偶者控除」という制度があります。
夫婦間で贈与をしたいケースで贈与税を軽減(または全額控除)できますが、一定の要件を満たし必要書類を揃え贈与税の申告を行う必要があります。
今回は贈与税の配偶者控除の要件や申告の方法、必要書類を解説していきます。
贈与税の配偶者控除の要件とは
贈与税の配偶者控除とは婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用の不動産もしくは居住用不動産を得るための金銭の贈与が行われた場合に最高2,110万円(基礎控除含む)が控除できる特例です。
要件は以下の3点です。
(1) 夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと (2) 配偶者から贈与された財産が、 居住用不動産であることまたは居住用不動産を取得するための金銭であること (3) 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した居住用不動産または贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること (注1)「居住用不動産」とは、専ら居住の用に供する土地もしくは土地の上に存する権利または家屋で国内にあるものをいいます。 (注2)配偶者控除は同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか適用を受けることができません。 |
出典:国税庁「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」
贈与税には暦年課税と相続時精算課税があり、いずれも基礎控除額は年間110万円です。夫婦間では相続時精算課税が選択できないため自動的に暦年課税が適用されます。
なお居住用の家屋と敷地、一方の贈与に対しても適用されますが下記①②のいずれかに該当しなくてはなりません。
・夫または妻が居住用家屋を所有している ・贈与を受けた配偶者と同居する親族が居住用家屋を所有している |
出典:国税庁「配偶者控除の対象となる居住用不動産の範囲」
贈与税の配偶者控除の申告と必要書類
贈与税は、贈与を受けた年の翌年2月1日~3月15日までに贈与を受けた人が管轄の税務署に申告します。
必要書類は以下の通りです。
・贈与税の申告書 ・受贈者の戸籍の謄本または抄本※ ・受贈者の戸籍の附票の写し※ ・贈与を受けた人が居住用不動産を取得したことを証するもの (例:居住用不動産の登記事項証明書など) ・居住用不動産の評価明細書(金銭ではなく居住用不動産の贈与を受けた場合)など |
※財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成されたもの
申告の方法は電子申告(e-Tax)、郵送、税務署の受付に直接持参するという3つの方法から選択できます。
まとめ
贈与税の配偶者控除、贈与税について分からないことがある方は、贈与税に詳しい税理士に相談してみましょう。

監修 玉城 慎之介
税理士/沖縄税理士会/税理士登録2017年/登録番号135867
琉球大学大学院を卒業後、STC国際税務会計事務所へ入社。
その後、STC国際税理士法人を設立。現在はSTCグループの代表として、相続案件のみならず上場企業の国際税務コンサルティング、連結納税から中小企業まで幅広い業態の税務業務、起業支援等に注力。
贈与税の非課税枠は、リフォーム資金にも使える!申告と必要書類も解説
住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置は、新築・既存の物件の取得だけではなくマイホームのリフォームにも、一定の要件を満たすことで適用されます。
この記事ではリフォームで住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置を利用する際の要件、贈与税申告の方法と必要書類をお伝えしていきます。
リフォームでも使える!住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置
父母や祖父母など直系尊属から、マイホームのリフォーム代金として贈与(2026年12月31日までの間)を受けた場合、省エネ等住宅の場合には1,000万円まで、それ以外の住宅は500万円までの贈与が非課税となります。
贈与税の非課税限度額 | 省エネ等住宅:1,000万円 それ以外の住宅:500万円 |
適用期限 | 2026年12月31日まで |
所得要件 | 贈与を受けた年の分の合計所得金額が2,000万円以下 ※床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は、1,000万円以下 |
床面積 | 増改築等をした後の住宅用の家屋の床面積が40㎡以上240㎡以下 |
その他の要件 | 増改築等に係る工事費用の額が100万円以上増改築等の工事に要した費用の額の2分の1以上が、自身の居住用である |
加えて、リフォームなどが、下記の工事に該当し、① 確認済証の写し、② 検査済証の写し、③増改築等工事証明書のいずれかにより証明されなければなりません。

出典:国土交通省「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置について」
この非課税措置には、受贈者(贈与された人)や家屋についても一定の要件を満たす必要がありますので、注意しましょう。
贈与税申告と必要書類
住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置を受けるためには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、贈与税の申告書に必要書類を添付して管轄の税務署に提出する必要があります。
なお、贈与税の課税方法が暦年課税と相続時精算課税で提出する申告書が異なります。

出典:国税庁「令和6年分贈与税の申告のしかた」
暦年課税で住宅取得等資金の非課税措置を申告したい方は「第一表」と「第一表の二」、相続時精算課税を既に申請しており住宅取得等資金の非課税措置を申告したい方は「第一表」と「第一表の二」「第二表」を作成・提出します。
加えて以下の書類を添付し、管轄の所轄税務署に提出します。
受贈者の戸籍謄本等合計所得金額を明らかにする書類 登記事項証明書請負契約書・売買契約書の写し 増改築等工事証明書(建築基準法上の大規模修繕の場合は、確認済証の写し又は検査済証の写しでも可) リフォーム工事瑕疵保険付保証明書(給水管・排水管又は雨水の浸入を防止する部分に係る修繕又は模様替えで、リフォーム工事瑕疵担保責任保険契約が締結されているもの) 耐震基準適合証明書、建設住宅性能評価書(耐震等級に係る評価が1、2、3であるものに限る)の写し、または既存住宅売買瑕疵保険付保証明書(いずれも登記簿上の建築日付が1981年12月31日以前である既存住宅のみ) ⑨ 質の高い住宅の基準に適合することを証する書類(非課税限度額の加算を申請する場合のみ) |
出典:国土交通省「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置について」
国税庁の「贈与税の申告のしかた」に「住宅取得等資金の贈与税の特例に係るチェックシート・添付書類一覧」もありますので、詳しく知りたい方はチェックしておきましょう。
まとめ
贈与税の非課税措置の要件、申告方法などについて分からないことがある方は税理士に相談してみてはいかがでしょうか。

監修 玉城 慎之介
税理士/沖縄税理士会/税理士登録2017年/登録番号135867
琉球大学大学院を卒業後、STC国際税務会計事務所へ入社。
その後、STC国際税理士法人を設立。現在はSTCグループの代表として、相続案件のみならず上場企業の国際税務コンサルティング、連結納税から中小企業まで幅広い業態の税務業務、起業支援等に注力。
相続税の未分割申告とは?分割後は修正申告・更生の請求を
相続税の申告期限は被相続人(亡くなった方)が亡くなった日(または亡くなったことを知った日)の翌日から10カ月以内です。
しかし、遺産分割で話がまとまらないなど事情がある場合は民法に規定する相続分または包括遺贈の割合で遺産を取得したものと仮定し、相続税の計算・申告・納税を行います。
その場合、「小規模宅地等の特例」「配偶者の税額の軽減の特例」など特例が適用されませんが一定の要件を満たすと特例を利用できます。
今回は遺産が未分割の場合の相続税申告と注意点を解説していきます。
相続税の未分割申告とは
相続税は被相続人の亡くなった日(または亡くなったことを知った日)の翌日から10カ月以内が申告・納税の期限です。
さまざまな事情により、未分割のまま相続税の申告期限を迎えてしまった場合は民法に規定する相続分または包括遺贈の割合で遺産を取得したものとして相続税の計算・申告・納税を行います。
なお、未分割の場合は相続税が軽減される「小規模宅地等の特例」「配偶者の税額の軽減の特例」などが適用できません。
<小規模宅地等の特例> 被相続人が居住していたなど一定の要件を満たすことで、相続税の評価額が一定の面積まで50~80%が減額となる制度 <配偶者の税額の軽減> 被相続人の配偶者が相続した財産の評価額が、①1億6千万円または②法定相続分相当額の多い方まで相続税がかからない制度 |
未分割の場合の相続税申告の注意点
遺産が実際に分割されていないものの3年以内に分割する予定であり特例を利用したい場合は、相続税申告で「相続税の申告書」や書「第11表(相続税がかかる財産の明細書)」などと一緒に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出します。

出典:国税庁「申告期限後3年以内の分割見込書」
未分割であった遺産を分割した後の「修正申告」「更正の請求」とは?
「修正申告」とは、最初に申告した税額よりも実際の分割に基づく税額が多い場合の手続きです。
「更正の請求」は、最初に申告した税額よりも実際の分割に基づく税額が少ない場合の手続きで、分割が行われた日の翌日から4か月以内に行わなくてはなりません。
上記の「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しており、申告期限から3年以内に遺産が分割された時に修正申告または更正の請求をすることで小規模宅地等の特例や配偶者の税額の軽減などの適用が可能となります。
まとめ
相続税の申告期限内に遺産分割が終わらずお困りの方、その場合の相続税申告についてお悩みの方は税理士に相談してみてはいかがでしょうか。

監修 玉城 慎之介
税理士/沖縄税理士会/税理士登録2017年/登録番号135867
琉球大学大学院を卒業後、STC国際税務会計事務所へ入社。
その後、STC国際税理士法人を設立。現在はSTCグループの代表として、相続案件のみならず上場企業の国際税務コンサルティング、連結納税から中小企業まで幅広い業態の税務業務、起業支援等に注力。
生前贈与を税理士に相談すべき理由、メリット4つを解説!
相続税対策に生前贈与を選ぶ方は多いですが、贈与や相続、税金の専門知識が無いとやり方を間違えてしまう恐れがあります。
相続・贈与に強い税理士に相談することで贈与契約書など書類に不備が生じる可能性が低くなり、節税のアドバイスをもらえるというメリットもあります。
贈与税・相続税の無申告や申告漏れが発覚すると無申告加算税・重加算税・延滞税が課される可能性があります。この記事では生前贈与や相続税対策を税理士に相談した方が良い理由・メリットを解説していきます。
生前贈与を税理士に相談した方が良い理由、相談のメリット4つを解説!
- 贈与税・相続税に詳しい税理士は知識・経験が豊富
- 適切な節税のアドバイスがもらえることも
- 書類に不備が生じる可能性が低い
- 税務調査で立ち会ってもらえる
1.贈与税・相続税に詳しい税理士は知識・経験が豊富
贈与税・相続税に詳しい税理士は、経験と知識が豊富な人が多く適切なアドバイスをもらえるでしょう。
例えば、贈与税には暦年課税と相続時精算課税という2つの課税方法があります。相続時精算課税制度は申告した場合に適用され、申告しなかった者は自動的に暦年課税となりますがどちらの課税方法がより納税額をおさえられるかは、ケースバイケースです。
2024年にはこれまで暦年課税だけに設けられていた「基礎控除」が相続時精算課税でも利用できるようになりました。また、相続・遺贈により財産を取得した者が暦年課税で贈与を受け取っていた場合に相続開始前7年以内(改正前は3年以内)に取得した贈与財産の価額を相続税の課税価格に加算することになりました。
生前贈与について税理士に相談することで、税金の知識に加えこういった税制の改正にも対応できるようになるでしょう。
2.適切な節税のアドバイスがもらえることも
相続税は被相続人の相続財産の額が基礎控除額(3,000万円+(600万円×法定相続人の数))を超える場合に計算・申告・納税が必要です。
「家族のために相続税の負担を軽減したい」という方は多いと思われますが、贈与・相続の知識が無い者が節税対策を行う行為はリスクが高く脱税になってしまう恐れがあります。
刑事罰や加算税の対象となってしまう可能性がありますので、税理士に相談し適切な相続税対策をおすすめします。
3.書類に不備が生じる可能性が低い
生前贈与では、基礎控除額110万円を数年間にわたって贈与する事例は少なくありません。
例えば毎年100万円を8年間に渡り贈与されることが、贈与する者と贈与される者との間で約束されている場合には、「定期金給付契約に基づく定期金に関する権利」とみなされ贈与税が課されます。
しかし、定期金給付契約に基づくものではなく毎年贈与契約を結び、贈与が行われ贈与財産の合計額が110万円以下であれば贈与税がかかりません。
毎年贈与契約を交わしたことの証明として「贈与契約書」を作成する必要があります。
贈与契約書にかかわらず、素人が書類を作成すると「日付が書いていない」「押印を忘れた」などの不備が生じる恐れがあります。
税理士に相談しアドバイスをもらうことで、書類に不備が生じる可能性が低くなるでしょう。
4.税務調査で立ち会ってもらえる
贈与税・相続税では税務調査が行われる場合があり、無申告や申告漏れが発覚すると無申告加算税・重加算税・延滞税が課されることがあります。
税務調査では担当の税理士がその場に立ち会うことが可能です。
自身で申告した場合でも、あらかじめ税理士に相談することは可能です。
生前贈与、相続税対策をお考えの方は税理士に相談を
「生前贈与をしたい」「相続税対策で少しでも家族の負担を軽減したい」という方は、税理士に相談してみてはいかがでしょうか。

監修 玉城 慎之介
税理士/沖縄税理士会/税理士登録2017年/登録番号135867
琉球大学大学院を卒業後、STC国際税務会計事務所へ入社。
その後、STC国際税理士法人を設立。現在はSTCグループの代表として、相続案件のみならず上場企業の国際税務コンサルティング、連結納税から中小企業まで幅広い業態の税務業務、起業支援等に注力。
相続登記義務化の過去分はいつまで?手続きの簡素化についても解説
2024年4月1日に相続登記が義務化されてから1年が経ちました。
2025年4月16日の毎日新聞によると、義務化を「知らない」人は全体の51.1%に上ります。過去に相続した不動産であっても、義務化の対象であり2027年3月31日までに相続登記をしないと過料が科される可能性があります。
しかし、相続登記をするためには期限内に被相続人(亡くなった方)が生まれてから亡くなるまでの戸除籍謄本などを収集し、相続人・相続割合など遺産相続を確定する必要があります。
今回は相続登記の義務化と過去に相続した不動産について、手続きの簡素化についてもお伝えしていきます。
過去に相続した不動産の相続登記は2027年3月31日まで
不動産を相続する人(相続人)は、土地・建物といった不動産を相続で取得したことを知った日から、3年以内に相続登記をしなくてはなりません。
2024年4月1日に相続登記が義務化され、3年間は経過措置期間となります。
義務化前に相続したことを知った不動産も義務化の対象であり、2027年3月31日までに相続登記をすることが定められています。
正当な理由がなく相続登記をしなかった場合は、10万円以下の過料が科される可能性があります。
必要な対応はケース別で異なりますので、以下のフローチャートを参考にしましょう。

出典:法務省「相続登記の申請義務化特設ページ 相続登記の申請義務化フローチャート」
相続登記の手続きを簡素化できる制度とは
不動産を相続した場合、相続による所有権移転登記の手続きを行う必要があります。ただし「忙しい」「手続きが複雑」とお困りの方もいらっしゃるでしょう。
そこで、簡易的に相続登記の申請義務を果たす①相続人申告登記、②戸籍証明書等の広域交付という2つの制度を紹介していきます。
1.相続人申告登記
相続人申告登記は、2024年4月1日の相続登記の申請義務化に伴い、創設されました。相続登記を申請する際には、被相続人(亡くなった方)生まれてから亡くなるまでの戸除籍謄本などの書類を収集し、相続人など遺産相続を確定しなくてはなりません。
期限内に相続登記の申請が困難な場合に「相続人申告登記」をすることで、簡易的に相続登記の申請義務を果たすことができます。
手続きの流れは以下の通りです。

出典:法務省民事局「相続人申告登記手続のご案内」
ただし、正式な登記ではなく権利を公示するものではないため、相続不動産の売却や抵当権の設定はできません。
また、遺産分割に基づく相続登記の義務は履行できないという点も注意しましょう。
2. 戸籍証明書等の広域交付
2024年3月1日から戸籍法の一部を改正する法律が施行され、本人や配偶者、一定の親族の請求により本籍地以外の市区町村の窓口でも、戸籍証明書・除籍証明書を請求できるようになりました。ただし、コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍、一部事項証明書、個人事項証明書は請求できません。
請求できる方は以下の通りです。

出典:法務省「戸籍法の一部を改正する法律について」
被相続人の本籍地が遠方でも、最寄りの市区町村の窓口で請求ができます。
相続の手続き、相続税でお困りの方は税理士に相談を
相続登記の手続きと同時に、相続税が基礎控除額(3,000万円+(600万円×法定相続人の数)を超える際には申告が必要となります。
相続税は、被相続人が亡くなった日または亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内に申告しなくてはなりません。
相続税の計算・申告は複雑ですので税理士に依頼する方は少なくありません。相続の手続きや相続税でお困りの方は税理士に相談してみてはいかがでしょうか。

監修 玉城 慎之介
税理士/沖縄税理士会/税理士登録2017年/登録番号135867
琉球大学大学院を卒業後、STC国際税務会計事務所へ入社。
その後、STC国際税理士法人を設立。現在はSTCグループの代表として、相続案件のみならず上場企業の国際税務コンサルティング、連結納税から中小企業まで幅広い業態の税務業務、起業支援等に注力。
株価が乱高下!相続税はどうやって計算するの?
トランプ大統領による相互関税の発動や90日間の停止などによる株価の乱高下の影響で「相続時に株価はどうなるのだろうか」と心配になる方もいらっしゃるでしょう。
株式は上場株式と非上場株式で計算方法が異なり、上場株式の評価は、直近3カ月で最も低い価額を選びます。
また、相続税は株式などの有価証券に加え現金・不動産といった亡くなった方(被相続人)の遺産の総額をもとに計算します。
今回は相続税における株式の評価についてお伝えしていきます。
相続税は、相続財産全ての評価額をもとに計算する
相続税は、株式を含む有価証券に加え預貯金や不動産など被相続人の遺産総額をもとに計算します。
相続税には基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)がありますので、課税価格の合計額が基礎控除額を下回る場合には税金を納める必要はありません。
相続税の目安についてはこちらの記事をご参照ください。
株式は上場株式と非上場株式で評価方法が異なりますが、今回は保有している人が多い上場株式の計算方法を解説していきます。
上場株式の評価は、直近3カ月で最も低い価額を選ぶ
上場株式は、東京証券取引所など金融商品取引所に上場されている株式を指します。
株式市場が開いている間は毎日値動きがありますので、約3カ月前までさかのぼり評価額を決定します。
以下4つのうち、最も低い価額が評価額となります。
1. 課税時期※の最終価格 2. 課税時期の属する月の毎日の最終価格の月平均額 3. 課税時期の属する月の前月の毎日の最終価格の月平均額 4. 課税時期の属する月の前々月の毎日の最終価格の月平均額 |
※課税時期とは、相続または遺贈で株式を取得した場合は被相続人が亡くなった日、贈与の場合は贈与により財産を取得した日
出典:国税庁「上場株式の評価」
課税時期に最終価格が無い、株式に権利落ちなどがある場合には、一定の修正を行います。
気配相場等のある株式の評価とは
日本証券業協会の登録銘柄や店頭管理銘柄または公開途上にある株式を「気配相場等のある株式」と呼びます。
そのうち、登録銘柄や店頭管理銘柄は、上場株式と同様に以下4つの価額のうち最も低い価額で評価します。
1.課税時期の取引価格(取引価格に高値と安値がある場合は平均額) 2.課税時期の属する月の毎日の取引価格の月平均額 3.課税時期の属する月の前月の毎日の取引価格の月平均額 4.課税時期の属する月の前々月の毎日の取引価格の月平均額 |
出典:国税庁「気配相場等のある株式の評価」
公開途上にある株式のうち、株式の上場・登録にあたって株式の公募または売り出しが行われるものは株式の「公開価格」で評価します。
また、株式の上場または登録の際に公募などが行われない公開途上にある株式の価額は、課税時期以前の取引価格などを勘案して評価することになります。
相続税における株式といった有価証券の評価は難しいため、税理士に相談することをおすすめします。
まとめ
株式の相続・贈与について分からないことがある方は税理士に相談してみましょう。

監修 玉城 慎之介
税理士/沖縄税理士会/税理士登録2017年/登録番号135867
琉球大学大学院を卒業後、STC国際税務会計事務所へ入社。
その後、STC国際税理士法人を設立。現在はSTCグループの代表として、相続案件のみならず上場企業の国際税務コンサルティング、連結納税から中小企業まで幅広い業態の税務業務、起業支援等に注力。
住宅取得資金贈与を頭金にしないと非課税にならない可能性が!非課税措置の概要や要件とは?
親などから住宅の新築・取得・増改築のために贈与されたお金に対して、贈与税が非課税となる「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」は、家の頭金など住宅取得のために使わないと贈与税が課される可能性があります。
また、「取得」の場合は贈与された資金を住宅取得に充てていても贈与を受けた年の翌年3月15日までに家の引渡しを受けていなければ、適用を受けることができません。
今回は適用対象外になる例や、住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の概要、要件、申告などについて解説していきます。
住宅取得資金贈与を家の頭金にしないと、適用対象外になることがある
住宅取得資金贈与の非課税措置は、一定の要件を満たすことで、父母や祖父母から自身の居住用家屋の新築・取得・増改築などに充てる金銭の贈与が非課税となる制度です。
住宅取得資金贈与のお金をマイホームの頭金など住宅取得のために使わないと、非課税にならず贈与税がかかる可能性があります。
住宅の取得と関連する家具や電化製品の購入に充てた場合も非課税とはなりませんので、注意しましょう。
受贈者(贈与された人)は贈与された年の翌年3月15日までに、住宅取得等資金の全額を家屋の新築・購入などに充て申告する必要があります。
なお、マイホームの「取得」の場合には、贈与された資金を住宅取得に充てていても贈与を受けた年の翌年3月15日までに引渡しをされていなければ、適用を受けることができません。
住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置とは
「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」は、父母や祖父母など直系尊属から自身のマイホームの新築・取得・増改築などに充てる代金を贈与された場合に、一定の要件を満たすと省エネ等住宅は1,000万円まで、それ以外の住宅は500万円までの住宅取得等資金の贈与が非課税となる措置です。
「省エネ等住宅」の要件を確認してみましょう。

出典:国税庁「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」等のあらまし
受贈者に関する要件は以下の通りです。

出典:国税庁「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」等のあらまし
最後に、住宅についての要件です。
新築又は取得の要件 | 1.新築または取得をした住宅用の家屋の登記簿上の床面積(マンションなどの区分所有建物の場合はその専有部分の床面積)が40㎡以上240㎡以下 2.家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住用である等 |
増改築等の要件 | 1.増改築等をした後の住宅用の家屋の登記簿上の床面積(マンションなどの区分所有建物の場合はその専有部分の床面積)が40㎡以上240㎡以下 2.家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住用である 3. 増改築等の工事費用の額が100万円以上である等 |
住宅については他にも細かな要件がありますので、気になる方は国税庁の「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」のページで確認してみましょう。
住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置は、申告の必要がある
非課税措置の適用を受けるためには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、贈与税の申告書に必要書類(戸籍の謄本、新築や取得の契約書の写しなど)一定の書類を添付し、管轄の税務署に提出する必要があります。
まとめ
贈与税の非課税措置には、他に「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」「夫婦間で居住用の不動産を贈与した場合の配偶者控除」があります。
非課税措置について詳しく知りたい方、贈与税の申告について分からないことがある方は税理士に相談してみましょう。

監修 玉城 慎之介
税理士/沖縄税理士会/税理士登録2017年/登録番号135867
琉球大学大学院を卒業後、STC国際税務会計事務所へ入社。
その後、STC国際税理士法人を設立。現在はSTCグループの代表として、相続案件のみならず上場企業の国際税務コンサルティング、連結納税から中小企業まで幅広い業態の税務業務、起業支援等に注力。
贈与税の申告を忘れたらどうなる?手続きや延滞税について解説
贈与税は「贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日(2025年度は3月17日)まで」に申告・納付します。
期限内に納税されなかった場合は、本来納付すべき贈与税に加え延滞税が課されます。
また、申告期限までに申告しなかった、実際にもらった額より少ない額で申告したケースでも加算税が生じます。
今回は贈与税の申告を忘れたらどうなるのか、贈与税の計算方法と納付方法をお伝えしていきます。贈与税申告について知りたい方はぜひ最後までご覧ください。
贈与税の申告期限を過ぎたら延滞税がかかる
2024年分に贈与を受け、税金がかかる場合には2025年度の2月1日から3月17日までに贈与税の申告・納付をしなくてはなりません。
納める贈与税額は、暦年課税または相続時精算課税のいずれかの方法で計算した額の合計です。
申告を忘れ、納付が遅れた場合は贈与税とあわせて「納期限の翌日から納付の日」までの延滞税を納付します。

出典:国税庁「令和6年分贈与税の申告のしかた 贈与税の納付」
まずは贈与税の計算・申告を早めに行いましょう。
贈与税の計算方法
贈与税には暦年課税と相続時精算課税という2つの課税方法があります。
相続時精算課税の届け出をしない場合は自動的に暦年課税で計算します。
暦年課税の場合は、年間110万円を超えた金額に対して「一般税率」または「特例税率」のいずれかを掛けて計算します。
特例税率は、父母や祖父母などの直系尊属から贈与により財産を取得した場合に用いるもので一般税率はそれ以外のケースで適用されます。
相続時精算課税を新たに適用したい場合は贈与税の申告期限内に「相続時精算課税選択届出書」「添付書類」「申告書第一表(兼贈与税の額の計算明細書)」「申告書第二表(相続時精算課税の計算明細書)」を提出する必要があります。
贈与税の申告書提出期間内に上記の届出書・添付書類が提出されない際には、自動的に暦年課税が適用されますので注意しましょう。
既に申告書と添付書類を提出し相続時精算課税が適用されている場合は、「相続時精算課税選択届出書」を提出した特定贈与者からの贈与の合計額が110万円超の場合に贈与税申告を行います。
相続時精算課税の贈与税の額は、国税庁のホームページによると「特定贈与者ごとに、1年間に贈与を受けた相続時精算課税適用財産の価額の合計額から、相続時精算課税に係る基礎控除額110万円を控除し、特別控除額(限度額2,500万円。前年以前において、既にこの特別控除額を控除している場合は、残額が限度額となります)を控除した後の金額に、一律20パーセントの税率を乗じて算出します」と記載されています。
贈与税の納付方法
贈与税の納付には以下の方法があります。

申告書は①e-Taxを利用して提出、②郵便による送付、③税務署の時間外収受箱へ投函という3つの方法により提出が可能です。ただし、提出方法により納付方法も異なりますので注意しましょう。
早めに贈与税申告を
贈与税の申告期限を過ぎると延滞税がかかってしまいます。早めに申告を行いましょう。
贈与税について分からないことがある方は、税理士に相談することをおすすめします。

監修 玉城 慎之介
税理士/沖縄税理士会/税理士登録2017年/登録番号135867
琉球大学大学院を卒業後、STC国際税務会計事務所へ入社。
その後、STC国際税理士法人を設立。現在はSTCグループの代表として、相続案件のみならず上場企業の国際税務コンサルティング、連結納税から中小企業まで幅広い業態の税務業務、起業支援等に注力。
贈与した側に確定申告は必要?贈与税がかかる、かからないケースとあわせて解説
贈与税は、贈与された人(受贈者)に課されますので贈与した側(贈与者)に確定申告は不要です。
また、受贈者においても確定申告ではなく「贈与税申告」を行います。
贈与税の申告・納税は、贈与を受けた年の翌年2月1日~3月15日まで(2025年度は3月17日まで)に行わなくてはなりません。
この記事で贈与税の課税方法や申告について知っておきましょう。
贈与税は贈与される人(受贈者)に課税される
贈与税は贈与された人に課される税金ですので、贈与した側(贈与者)は申告・納税をする必要がありません。
贈与税には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つの課税方法があります。
暦年課税は1年間(1月1日~12月31日)に贈与された財産の合計を基に税金を計算します。
一定の要件を満たし、相続時精算課税を選択し届け出をしていない場合は自動的に暦年課税で贈与税が算定されます。
年間の基礎控除額は110万円で、110万円以下であれば贈与税はかからず申告も不要です。
相続時精算課税は60歳以上の父母または祖父母などの特定贈与者が、18歳以上の子・は孫などの受贈者に財産を贈与した場合に選択が可能です。特定贈与者が亡くなった時に相続財産の価額に、相続時精算課税が適用された年の贈与時の価額(2024年1月1日以後の贈与については110万円を控除した額)を加えます。
2024年以降は、暦年課税と同様に110万円が基礎控除額です。
相続時精算課税を選択したい場合は、贈与を受けた年の翌年の2月1日~3月15日に「相続時精算課税選択届出書」を提出する必要があります。一度相続時精算課税を選択すると、取り消すことができませんので慎重に検討しましょう。
贈与した側に確定申告は不要だが、受贈者に贈与税申告・納付が必要な場合がある
ただし、受贈者は以下の場合贈与税申告を行う必要があります。
1.暦年課税で基礎控除額110万円超の贈与を受けた 2.相続時精算課税を選択し、申請した初年度 3.相続時精算課税を申請し、年間110万円超の贈与を受けた 4.贈与税の特例「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」「住宅取得資金の贈与」「教育資金の贈与」「結婚・子育て資金の贈与」を利用した |
なお110万円超の贈与であっても、夫婦や親子、兄弟姉妹など自身の扶養義務を負う者から生活費・教育費に充てるために得たもので通常必要と認められる財産(例:大学の入学金など)に対しては課税されません。
加えて個人から贈与された香典・花輪代・年末年始の贈答品・祝物・見舞い品などで、社会通念上相当と認められるもの、法人から贈与された財産などにも課されませんので、気になる方は税理士に相談してみてはいかがでしょうか。
まとめ
2025年度の贈与税申告は、2月1日~3月17日までとなっています。期限を過ぎると延滞税などが加算されてしまいますので、分からないことがある方は早めに税理士に相談しましょう。

監修 玉城 慎之介
税理士/沖縄税理士会/税理士登録2017年/登録番号135867
琉球大学大学院を卒業後、STC国際税務会計事務所へ入社。
その後、STC国際税理士法人を設立。現在はSTCグループの代表として、相続案件のみならず上場企業の国際税務コンサルティング、連結納税から中小企業まで幅広い業態の税務業務、起業支援等に注力。
相続で確定申告は必要?不要?不動産売却、生命保険、未支給年金などケース別に解説
相続では、被相続人(亡くなった方)の相続財産は原則相続税の課税対象です。よって相続財産に関しては、相続人(遺産を相続する方)の所得税などを申告する確定申告は不要です。
しかし、相続不動産の売却をした場合、被相続人が加入している保険の保険金が支給され保険料の負担者と受取人が同一人物、未支給年金があるといった際には相続人が確定申告をしなくてはいけません。
詳しく解説していきます。
相続で相続人の確定申告が必要になるケースもある
相続において、相続人の確定申告が必要になるケースは以下の通りです。
相続した財産(不動産や株式など)を売却し、利益が出た 賃料収入が得られる不動産を相続した 被相続人の未支給年金を受け取った 被相続人が被保険者、保険料の負担者と受取人が同一人物 代償分割でみなし譲渡が生じた |
1.相続した財産(不動産や株式など)を売却し、利益が出た
不動産(土地・建物)や株式などの相続財産を売却し、利益が生じた場合は相続人に譲渡所得税が課されます。
また、相続人が複数おり財産を換価分割(売却したお金で分割)する場合においても、利益が出ると譲渡所得を得たとみなされ確定申告が必要となります。
2.賃料収入が得られる不動産を相続した
相続人が被相続人から賃貸マンション・駐車場を相続した際には、土地や建物は相続税の課税対象です。
ただし、相続開始日以降の賃料収入は相続人の所得となりますので確定申告が必要です。
3.被相続人の未支給年金を受け取った
被相続人が公的年金を受給しており、未支給年金がある場合は被相続人と生計が同一の配偶者や子どもなど一定の親族が請求をすることができます。
未支給年金の請求権は、亡くなった受給権者の遺族が「自己の固有の権利」として請求するものですので相続税の課税対象ではなく支給を受けた遺族の「一時所得」になります。
一時所得には最高50万円の特別控除額がありますので、他の一時所得と合わせて計50万円以下の場合確定申告は不要です。
4.被相続人が被保険者、保険料の負担者と受取人が同一人物
死亡保険金を受け取った際に、被相続人が被保険者で保険料の負担者と保険金の受取人が同一人物である場合所得税の課税対象になります。

出典:国税庁「死亡保険金を受け取ったとき」
一時金で受け取ったケースでは一時所得、年金として受け取ったケースでは雑所得に分類されます。
5.代償分割でみなし譲渡が生じた
相続人のうち1人が代表して遺産を相続し、他の相続人に金銭や財産を与える分割方法を「代償分割」と言います。
例えば「相続財産が不動産のみ」「相続人が事業の後継者である」といったケースで代償分割が利用されます。
代償分割は他の相続人に代償として金銭を支払った時には非課税ですが、不動産や株式などの財産を代償としたケースでは注意が必要です。
代償とした財産の時価が、取得費よりも高いと利益が生じたとみなされ財産を譲った相続人に譲渡所得税が課されます。
まとめ
相続財産の売却をして利益が生じた、未支給年金があるなどの場合では相続人が確定申告をする必要があります。分からないことがある方は、税理士に相談してみてはいかがでしょうか。

監修 玉城 慎之介
税理士/沖縄税理士会/税理士登録2017年/登録番号135867
琉球大学大学院を卒業後、STC国際税務会計事務所へ入社。
その後、STC国際税理士法人を設立。現在はSTCグループの代表として、相続案件のみならず上場企業の国際税務コンサルティング、連結納税から中小企業まで幅広い業態の税務業務、起業支援等に注力。