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「相続人がいない財産」について
1. はじめに
亡くなった人が残した財産のうち、相続人がいない財産については一定の手続きの後、国庫に納められることになります。
NHKの取材によりますと、2022年度の相続人がいない財産で国庫に納められた財産は768億円にものぼります。これは記録がある2013年度(336億円)から倍以上の金額となっております。
※NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231224/k10014298341000.html
2. 相続人がいない場合とは(相続人不存在)
相続人がいない場合を相続人不存在といい、下記が主な相続人不存在の状況となります。
2-1. 法定相続人がいない
法定相続人がいない場合には相続人不存在となります。
法定相続人は民法で定められた相続人となり、主に配偶者、子、親、兄弟姉妹になります。
2-2. 相続人の全員が相続放棄
法定相続人がいる場合であっても、その相続人の全員が相続放棄をした場合には相続人不存在となります。
相続する財産より借金などの債務が多い場合や、長年疎遠になっていたため今更財産はいらないなど、相続放棄でも様々な動機があります。
3. 相続財産清算人
相続人不存在の場合には、「相続財産清算人」が亡くなった方の財産を管理します。
相続財産清算人は、亡くなった方に対して債権を有している債権者、特別縁故者などの利害関係者や検察官が家庭裁判所に申し立てて、選任してもらいます。
相続財産清算人は、相続財産を清算するのに最も適任と認められる人が選ばれ、弁護士、司法書士等の専門職が選ばれることが多いとされています。
4.相続財産清算人の選任後
①相続人を捜すための公告
→相続人を捜すための公告を6か月以上の期間定めて行います。この公告の期間満了までに相続人が現れなければ、相続人がいないことが確定します。
②債権申立ての公告
→①の公告があったときは、相続清算人は、債権申立ての公告を2か月以上の期間を定めて行います。相続財産の債権者や財産をもらうことになっていた人(受遺者)を確認するために行います。
③特別縁故者に対する財産分与の申立て
→①の公告の期間満了後、3か月以内に特別縁故者が家庭裁判所に申立てをし、認められれば財産分与がなされます。
④財産の精算
→相続財産清算人は、法律にしたがい債権者や受遺者へ支払いをしたり、特別縁故者に相続財産を分与するための手続きをします。相続財産が残った場合は、相続財産は国庫に納められることになります。
5.特別縁故者
5-1.特別縁故者とは
特別縁故者として認められる可能性があるのは、以下のような人です。
・被相続人と生計を同じくしていた者
・被相続人の療養看護に努めた者
・その他、被相続人と特別の縁故があった者
5-2.特別縁故者が財産分与を受けた場合
特別縁故者が財産の分与を受けた場合には、その財産を被相続人から「遺贈」によって取得したものとみなされます。
そのため、基礎控除額の3,000万円を超えると相続税の申告・納付の手続きが必要になります。
6.おわりに
相続人がいない場合の制度についてご紹介いたしました。
受遺者及び特別縁故者が財産をもらうことになった場合には、相続税の対象となり、基礎控除額を超えると相続税の申告・納付の手続きが必要になるほか、相続税が2割増しとなります。
弊社では相続税や贈与税についてご相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
相続登記義務化が開始されました。【2024年4月1日~】
2024年も4月に突入し、新年度が始まりました。過ごしやすい気温となる日も増え、全国的にも桜が見ごろとなり始めている様で、春の訪れを実感しております。新たな社員様を迎えられたクライアント様も多く、また皆様にとって活力ある一年の始まりとなることを切望しております。
さて、2024年4月1日より、相続登記の義務化が開始されました。過去コラムでも紹介しましたが、制度開始となりましたので改めてのご周知と、関連する法改正をご紹介致します。過去コラムと併せてお読み下さい。
相続登記の義務化について
相続登記の義務化とは、相続によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。また遺産分割が成立した場合、これにより不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に相続登記をしなければなしません。いずれの場合でも、正当な理由なく3年以内に登記申請をしなかった場合、10万円以下の過料対象となります。
ここで重要なことが、2024年4月1日より前に相続が開始している場合も義務化の対象となりますので、これまでに不動産を相続したが登記申請がまだお済でない方は、お早めに申請手続きをお済ませ下さい。(3年の猶予期間あり)
関連する法改正
相続登記の義務化に関連する法改正を紹介させて頂きます。
1,戸籍証明書等の広域交付制度 2024年3月1日施行
本籍地以外の市区町村役場で戸籍証明書・除籍証明書等を取得できるようになり、複数の本籍地にまたがる戸籍謄本等の請求も一か所の市区町村役場から行うことができるようになりました。
また、本人とその配偶者、直系尊属、直系卑属の戸籍謄本等を請求することができます。
※兄弟姉妹など、上記に該当しない者は従来通り本籍地での取得となります。
2,所有者の住所変更登記等の義務化 2026年4月1日施行
当制度も相続登記義務化の発端となる、所有者不明土地の解消(所有者の所在不明土地の解消)を目的としたもので、所有者の氏名、住所、名称に変更があった場合、その変更があった日から2年以内にその変更登記が必要となります。
その変更があった日とは、住民票や戸籍謄本、会社登記簿に記載されている転居日や氏名変更日が該当します。
なお相続登記の義務化と同様に過料があり、所有者の住所変更登記等の義務化の場合には、正当な理由がなく2年以内に登記申請をしなかった場合、5万円以下の過料対象となります。
まとめ
所有者不明土地の解消を目的とした相続登記の義務化が開始され、これまで不動産登記法上任意とされていた所有者の住所変更登記も義務化となります。2026年4月1日施行と準備期間が設けられているため、まだ変更申請手続きがお済でない方はお早めにご確認し申請手続きをお済ませ下さい。
コロナ後、相続税の税務調査が増加⁈ 調査結果から読み解く申告状況
はじめに
「税務調査」と聞くと、思わずゾッとする方もいらっしゃるのではないでしょうか。税務調査は法人、個人事業主だけに留まらず、遺産を相続した相続人に対しても行わることがあるため、私たちにとっても決して無関係なものではありません。
そこで、今回のコラムでは、国税庁が昨年末である令和5年12月に公表した「令和4事務年度における相続税の調査等の状況(※)」をもとに、最新の相続税の税務調査の申告状況について読み解いていきます。
※令和4年7月~令和5年6月末までの期間を指します
令和4年度の相続税の税務調査の結果
令和3事務年度においては、令和4事務年度から、実地調査件数が8,196 件、追徴税額合計が669 億円と、ともに前事務年度より増加(対前事務年度比 129.7%、119.5%)する結果となりました(下記URL2ページ目参照)。
また、実地調査以外に、文書、電話による連絡又は来署依頼による面接により、申告漏れ、計算誤り等が指摘されるケースも増え、これらによる追徴税額は合計で87億円(対前事務年度比125.2%)にまでのぼりました(下記URL3ページ目参照)。
この結果は、世の中がコロナ渦からある程度落ち着いたため、調査件数が増えたと同時に、実地調査に代え、電話等の非接触型の対応が機能したことにより、これまで以上に申告誤り等の指摘数が増えているものと捉えることができます。
【国税庁HP】https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2023/sozoku_chosa/pdf/sozoku_chosa.pdf
申告漏れの多い財産
申告をしたからといって、その内容に誤りがあると判断されれば、追徴課税を被る場合があります。令和4年度においては、申告漏れ相続財産のうち、現預金や有価証券といった金融資産がおよそ全体の4~5割に及びました(上記URL7ページ目参照)。この結果から、金融資産は土地や家屋といった財産よりも見落としやすく、また、これらの財産の調査が重点的に行われたものとも解することができます。
海外にある財産の申告漏れにも要注意
令和4事務年度においては、海外資産に係る申告漏れ等の非違件数は 174 件(対前事務年度比151.3%)、海外資産に係る申告漏れ課税価格は 70 億円(同125.2%)と大きく増加しています(上記URL5ページ目参照)。相続税の申告の際には、海外にある財産まで考慮する必要があるため、申告漏れには是非とも注意したいところです。
おわりに
国税庁の令和4年度の相続税の税務調査の結果から、申告漏れ、誤り等により指摘されるケースが増えていることがご理解できたかと思います。相続税の申告の際には、最近当コラムでも取り上げました、暗号資産やNISA口座といった金融資産も対象になるため、こうしたあまり馴染みのない資産を意外と見落としてしまっている方もいるのではないでしょうか。このような財産の申告漏れを防ぐためにも、一度、専門家に相談してみるのもいいかもしれません。
ビットコインが史上最高値を更新!暗号資産と相続税の関係
はじめに
暗号資産(仮想通貨)として代表的なビットコインが約2年4か月ぶりに史上最高値を更新した、というニュースがありました。最高値を更新後はまたすぐ急落するなど、ビットコインを保有している方にとっては落ち着かない値動きになっています。
本日は、暗号資産と相続税との関係についてご紹介したいと思います。
暗号資産にも相続税が課税される?
亡くなった方が暗号資産を保有していた場合、その暗号資産にも、もちろん相続税が課税されます。
それでは、暗号資産は相続税の計算上、どのように評価されるのでしょうか?
ビットコインのような活発な市場が存在する(※)暗号資産は相続が発生した日時点の取引価格によって評価することになっています。
※「活発な市場が存在する」場合とは、暗号資産取引所又は暗号資産販売所において十分な数量及び頻度で取引が行われており、継続的に価格情報が提供されている場合をいいます。
【国税庁HP 暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)(令和5年12月)】
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/virtual_currency_faq_03.pdf
評価方法はとてもシンプルですが、現在のように高値となっている場合、懸念される点もあります。
例えば、相続が発生した日の暗号資産の取引価格が1,000万円、数か月後に急下落して取引価格が500万円となった場合はどうでしょうか。
この場合、今は500万円の価値しかないものが相続税の計算上はなんと1,000万円の価値があるものとして課税されてしまうのです。場合によっては相続税の納税資金が不足してしまうということになりかねません。
おわりに
上記のように、思わぬ課税がされてしまう可能性がある暗号資産ですが、逆に相続が発生した日が偶然安値でその後価値が上昇して得をしたという方もいるでしょう。
価値の変動が激しい財産なので、課税時期の取引価格だけではなく数か月の中から一番低い取引価格を選択できるようになったら良いなと個人的には思っています。
暗号資産はまだ歴史が浅い財産なので課税の公平という意味で評価方法が改善されていくと良いですね。
新NISA始まる!相続との関連性は?
はじめに
新NISAが2024年1月から開始されておりますが、皆様は新NISAをやっておりますでしょうか?
まずNISAとは、株式等への投資で得た利益(配当や売却益)について通常は税金がかかりますが、NISA口座を通じて得た利益については非課税になるという制度になります。
従来からあったNISA制度が一部改正され、2024年1月から導入されているのが新しいNISA制度、いわゆる新NISAとなっております。
NISA制度の詳しい概要については下記の金融庁のサイトをご確認ください。
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/nisa2024/index.html
NISA口座を相続した場合の税金はどうなるの?
NISA口座で得た利益について非課税であれば、NISA口座を相続した場合の税金も非課税になるのではと思った方もいるかもしれませんが、NISA口座で非課税となるのは所得税・住民税であり、相続税は残念ながら非課税となりません。
NISA口座も故人の金融資産になりますので、相続税の対象となる財産に含まれます。そのためNISA口座を含めた財産の金額が一定額を超える場合には相続税が生じることになります。
NISA口座を相続したらNISA口座はどうなるの?
故人の方が所有していたNISA口座にある金融資産を相続することになった場合、相続する方のNISA口座へそのまま移管できるのでしょうか? 答えは「No」です。
NISA口座にある金融資産を相続することになった場合には、相続する方のNISA口座以外の証券口座に移管することになります。
おわりに
老後2,000万円問題があり、新NISA制度も始まったことに伴い、株式投資への関心が世間的に高まってきていると思いますが、皆様はいかがでしょうか?
令和5年分贈与税申告書の受付開始と震災に係る一部特例について
令和5年分贈与税申告書の受付が開始されました
今年も早いもので一か月が経過しました。まだまだ冷えこむ日々が続き、体調管理に苦労されることも多いのではないでしょうか。東京都心でも記録的な積雪を観測したとのことで、日々の暮らしにも影響が出ていることでしょう。健康管理を徹底し免疫力を高め、この寒さを乗り越えていきましょう。
さて、令和5年分の贈与税申告書の受付が開始されました。提出期限は、令和6年2月1日(木)から同年3月 15日(金)までとなっております。原則として、1年間で110万円を超える贈与を受けた者(受贈者)は贈与税の申告・納税の義務がございますので、この期限内に申告・納付手続きをお済ませください。
◇国税庁「申告書の作成のしかた等」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/shinkoku/zoyo/tebiki2023/pdf/004.pdf
災害によって一定の被害を受けた方は、一部特例がございます
まず、この度の能登半島の地震で被害に遭われた皆様に、改めて心からお見舞いを申し上げます。前回に続き、災害によって一定の被害を受けた場合の特例をご紹介させて頂きます。
前回のコラムでは、「相続税及び贈与税に係る申告・納付等の期限の延長」をご紹介させて頂きました。こちらは、被相続人が石川県、富山県に納税地を有する場合には、令和6年1月1日以降に到来する相続税、贈与税の申告・納付期限が自動で延長となることをご紹介させて頂きました。
今回、「相続時精算課税に係る土地又は建物の価額の特例の創設」についてご紹介します。(相続時精算課税については、2023年8月18日掲載「マイホームの購入・改築予定者必見!相続時精算課税制度の特例」コラムにて制度を解説しておりますのでご参照下さい。)
令和5年度税制改正により相続税法及び租税特別措置法の一部が改正され、相続時精算課税に係る土地又は建物の価額の特例が創設されました。こちらは、相続時精算課税適用者が、特定贈与者から贈与により取得した土地又は建物について、その贈与の日から特定贈与者の死亡に係る相続税申告書の提出期限までの間に、令和6年1月1日以後に災害によって一定の被害を受けた場合には、その相続税の課税価格となる土地又は建物の価額は、その災害による被災価額を控除した残額とすることができる制度です。
※被災価額とは、被災額から保険金などにより補填される金額を差し引いた金額をいい、その土地の贈与時の価額又はその建物の想定価額を限度とする。)
この特例の適用を受けるためには、相続時精算課税適用者が、原則としてその災害発生日から3年を経過する日までに、災害による被害額や保険金などにより補填される金額などの事項を記載した申請書に「罹災証明書」など一定の書類を添付して、贈与税の納税地の所轄税務署長に提出・承認を受ける必要がございます。
現在、当制度の適用を検討される方々だけでなく、昨今異常気象が毎年のように発生することから、全ての方々に今後の知識としてご参照頂ければと存じます。さらに詳しい制度概要は、下記リンクよりご参照下さい。
◇令和5年度 相続税及び贈与税の税制改正のあらまし
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0023006-004.pdf
災害による被害を受けたときの相続税の税制上の措置について
この度の能登半島の地震で被害に遭われた皆様に心からお見舞いを申し上げます。
今回は、能登半島地震における相続税法上の措置およびこの度の地震のように、災害被害を受けたときの相続税の税制上の措置についてご紹介させて頂きます。
能登半島地震における相続税の税制上の措置
1.相続税及び贈与税に係る申告・納付等の期限の延長
被相続人が石川県、富山県に納税地を有する場合には、令和6年1月1日以降に到来する相続税、贈与税の申告・納付期限が自動で延長となります(申請手続き等は必要ございません)。
※相続税の場合は令和5年2月28日、贈与税の場合は令和5年1月1日以降に相続(贈与)により財産を取得した方が対象になりますのでご注意ください。
また、石川県、富山県以外に納税地を有する場合におかれましても、この度の地震で被災された方については、所轄の税務署長に対し、個別に申請することで、これらの措置の適用を受けることができます。
延長期限に関しましては、被相続人が石川県、富山県内に納税地を有する場合には、①国税庁の定める日と、②災害発生日の翌日から10カ月を経過する日(令和6年11月1日)のいずれか遅い日まで延長となります(被相続人の納税地が石川県、富山県以外の場合には、令和6年11月1日まで)。
1月24日現在、「国税庁の定める日」はまだ公表されておりませんが、少なくとも、令和6年11月1日までは延長できるということになります。
なお、細かな要件もございますので、ご自身が対象になるか否か等につきましては、下記URLからご確認ください。
【国税庁-「令和6年能登半島地震」により被災された納税者の相続税及び贈与税に係る申告・納付等の期限の延長について】
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/saigai/r6/noto/pdf/0023001-073_01.pdf
2.相続放棄等の熟慮期間の延長
相続人は、被相続人の残した財産のみならず、借金等の債務も引き継ぐことになりますが、こうした場合、「相続放棄」をすることにより、引き継がない選択をすることも可能です。
通常、相続放棄をする場合、相続の開始があったことを知った日の翌日から3カ月以内に家庭裁判所に申述をしなければなりませんが、この度の被害に遭われた方に関しましては、その期間を令和6年9月30日まで延長することとされています(ご自身が対象になるか否かにつきましては下記ホームページをご確認ください)。
【法務省ホームページ】
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00346.html
その他、今回の地震をはじめ、災害があった場合には、特定土地等の特例や災害減免法による減免といった措置もございますので、下記にて紹介させて頂きます。
災害を受けたときの相続税の税制上の措置とは?
今回の能登地震に限らず、災害を受けた場合、相続税には申告期限の延長、減免といった税制上の措置があります。以下、その措置の内容について紹介させて頂きます。
なお、ここでいう「災害」とは「特定非常災害」を指し、甚大な被害をもたらしたと内閣府が定める災害になります(詳細は下記URLをご確認ください)。以下、このページでは便宜的に「災害」と表記します。
1.特定土地・特定株式等の評価額
特定土地・特定株式については、取得時の時価によらず、災害発生直後の価額によることができるため、税負担を軽減できる可能性があります。
※特定土地…災害により甚大な被害を受けたと財務大臣が指定する地域のこと
※特定株式…災害により甚大な被害を受けた地域内にあった動産、不動産、不動産の上に存する権利および立木の価額の合計額が保有資産の合計額の10分の3以上である法人の株式等(上場株式等を除く。)
2.災害減免法による減免
相続等により取得した財産が、災害によって被害を受けた場合、一定の要件を満たせば、相続税が減免されます。
- 法定申告期限前に災害があった場合
相続税の申告書に、被害の状況や被害額等を記載した相続税等の財産の価額の計算明細書を添付し、申告期限内に税務署に提出することによって、課税価格を減額することができます。
- 法定申告期限後に災害があった場合
相続税等の免除承認申請書に、被害の状況や被害額等を記載し、災害のやんだ日から2か月以内に、納税地の所轄税務署長に提出することによって、課税価格を減額することができます。
なお、要件など詳細につきましては下記URLをご参照ください。
その他、災害により被害を受けた場合にはこの度の地震同様、申告・納付期限の延長を受けられる場合がございます。そのため、災害があった際には、ご自身が措置の対象になるか否かをまずは確認してみましょう。
【国税庁-災害を受けたときの相続税の取扱い】
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/saigai/8006.htm
【国税庁-相続税又は贈与税の災害減免措置について(令和6年能登半島地震用)】https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/saigai/r6/noto/pdf/0023001-073_02.pdf
おわりに
ここで紹介した内容以外にも、災害があった場合には相続税に対する様々な税制上の措置がございます。今回は申告期限の延長や減免といった主な措置を紹介するに留まりましたが、その時の状況に応じて、税理士や専門家の方にご相談頂くことをお勧めいたします。
知らなかったではすまない!?事業を相続した場合の消費税とインボイス!②
事業を行っていた被相続人の事業を相続人が承継した場合の消費税の取り扱いについて、前回から2回に分けてご紹介しております。第2回目である今回は「被相続人が適格請求書(インボイス)発行事業者だった場合」に、どのようなことに注意しなければならないのかをご紹介をします。
被相続人が死亡した場合に相続人は何をするの?
適格請求書(インボイス)発行事業者だった被相続人が死亡した場合には相続人には速やかに、納税地の所轄税務署長に「適格請求書発行事業者の死亡届出書」を提出する必要があります。
なお、亡くなった被相続人の適格請求書(インボイス)発行事業者の登録の効力は、「上記の死亡届出書の提出の翌日」又は「死亡した日の翌日から4月を経過した日」のいずれか早い日に失われます。
相続人もインボイス登録が必要!?
前回もご紹介したように相続人の消費税の納税義務の判定は被相続人の課税売上高も考慮する必要があります。そのため、相続で事業を承継したことがきっかけで初めて課税事業者になるケースもあり、相続人はインボイス登録を行うかどうか検討する必要があります。
インボイス制度では、被相続人の適格請求書(インボイス)発行事業者の登録の効力は相続人には及ばず、事業者ごとに適格請求書(インボイス)発行事業者の登録をする必要があります。
したがって、インボイス登録を希望する場合には、新たに適格請求書(インボイス)発行事業者の登録の申請を行わなければなりません。
4ケ月間のみなし登録期間がある
適格請求書(インボイス)発行事業者の登録の申請をすると税務署から登録番号が交付されるまで、通常であれば1~2週間程度時間がかかります。この発行されるまでの期間、相続人は登録番号を請求書に記載することができなくなります。そこで特別に、相続があった日から4月を経過した日又は、適格請求書(インボイス)発行事業者の登録があった日の前日のいずれか早い日までは、被相続人の登録番号を使用することができ、被相続人の登録番号が相続人の登録番号とみなされます。
知らなかったではすまない!?事業を相続した場合の消費税とインボイス!①
亡くなった方の不動産事業を承継した場合に潜む落とし穴
今回は、2回に分けて事業を行っていた被相続人が適格請求書(インボイス)発行事業者ではない場合とある場合とに分けてご紹介します。今お読みになっている第1回目では、「被相続人が適格請求書(インボイス)発行事業者ではない場合」をご紹介します。
例えば、両親のどちらかから事業用資産を相続し、その営まれていた事業を承継する人も中にはいるでしょう。もともと個人事業を行っている方であれば、さほど問題となるケースは多くはないと思います。しかし、サラリーマンが事業承継した場合には消費税の納税義務者になる可能性があり、実は消費税の納税義務になっていたということもあるかもしれません。
では、具体的にどのようなケースがあるのかを見てみましょう。
消費税の納税義務とは
個人事業者の消費税の納税義務は、基本的に、本人の2年前の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかです。(そのほかにも要件がありますが割愛します。)1,000万円を超えると消費税の納税義務者となり通称「課税事業者」といい、反対に1,000万円以下の事業者は「免税事業者」といいます。
相続があった場合の消費税の納税義務とは
例えばサラリーマンである相続人が親の事業を承継した場合のように、その相続人の2年前の課税売上高がたとえ0円と1,000万円以下でも次のパターンに応じて納税義務者になる可能性があります。
①相続があった年の納税義務について
・被相続人の2年前の売上高が1,000万円を超えている場合
→この場合には相続があった日の翌日から相続があった年の12月31日までの間に係る消費税を納める必要があります。
②相続があった年の翌年とその翌々年
・被相続人の2年前の課税売上高と相続人の課税売上高との合計額が1,000万円を超える場合
→その年、1年間は消費税の納税義務者となります。
このように、被相続人の課税売上高も考慮する必要があるため、気づかないうちに実は、消費税の納税義務だったということもあります。
次回、第2回目では、被相続人が「適格請求書(インボイス)発行事業者である場合」をご紹介します。
相続税が非課税に!?相続税と「ふるさと納税」との関係
はじめに
今年も残すところあとわずかとなりました。
この時期は「ふるさと納税」を行う方や、行おうと考えている方も多いのではないでしょうか?
ふるさと納税は、自身が応援したい地方公共団体に寄附を行うことで、その地域の名産品などが返礼品としてもらえるほか、寄附額から2,000円を差し引いた金額が所得税・住民税から控除される(※)というお得な制度です。実質2,000円で返礼品をもらえるということで大人気の制度で、総務省の公表によると令和4年度には受入件数5,184.3万件、受入額が9,654.1億円となったそうです。
※所得金額に応じた控除限度額がありますので注意が必要です
そんなふるさと納税ですが、実は相続税の節税としても使える場面があります。
相続税が非課税に!
相続税には「国等に対して相続財産を贈与した場合等の相続税の非課税等」という規定があります(租税特別措置法70条)。この規定は、相続財産を国や地方公共団体などに贈与すると、その財産については相続税の対象から除かれるというものです。
相続財産を使ってふるさと納税を行った場合も、この規定の適用を受けることができます。
例えば、相続財産のうち現金10万円をふるさと納税に充てた場合、この現金10万円が相続税の対象から除かれます。相続税の税率は10%~55%ですが、最低税率の10%で計算した場合でも1万円(=10万円×税率10%)の節税となります。所得税・住民税から控除される金額と合わせると返礼品がもらえるだけでなく寄附額よりも大きな節税となることもあります。
なお、主な適用要件は下記の通りとなります。
- 遺言による寄附でないこと
- 相続税の申告期限までに寄附を行うこと
- 相続税の申告時に明細と寄附金受領証明書を添付すること
- 相続した財産をそのままの形で寄附すること
(不動産などを現金に換えてから寄附するのは適用対象外)
【国税庁HP No.4141 相続財産を公益法人などに寄附したとき】
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4141.htm
さいごに
所得税・住民税の節税になることは広く知られている「ふるさと納税」ですが、上記のように相続税の節税となることもあります。適用できる場面は少ないかもしれませんが適用できるときは忘れず活用したいですね。
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