相続時精算課税制度の改正点を理解して、相続対策の見直しを検討しませんか?

 前回のコラムでは、令和5年度税制改正における暦年贈与制度の変更点「加算対象期間の見直し」についてご説明させて頂きましたが、「相続時精算課税制度」にも変更が加えられましたので併せて確認したいと思います。

①相続時精算課税制度に基礎控除の創設

②相続時精算課税に係る土地又は建物の価額の特例の創設

 上記改正点について解説します。国税庁解説パンフレットを併せてご確認下さい。

※国税庁解説パンフレット【国税庁 HP 令和5年度 相続税及び贈与税の税制改正のあらまし】https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0023006-004.pdf

なお、暦年贈与の制度変更については、前回コラムをご参照下さい。

相続時精算課税制度について

 相続時精算課税制度は、父母や祖父母から子や孫に対して贈与を行った場合に選択できる制度です。改正前の制度では、贈与財産の累計が2500万円(特別控除)までは贈与税がかからず、累計が2500万円を超えた場合、超えた部分に対して一律20%の贈与税が発生しました。

 この時、いったん相続時精算課税制度を選択した場合、特定贈与者(相続時精算課税選択届出書に係る贈与者)からの贈与について、暦年贈与での贈与ができずに相続時精算課税制度での贈与しかできず、特定贈与者から贈与された財産について、その金額の多寡にかかわらず、全て贈与税の申告をしなければなりませんでした。

①相続時精算課税制度に基礎控除が創設

 令和5年度税制改正により、相続時精算課税制度に基礎控除が新設されました。こちらの基礎控除は、暦年贈与の基礎控除のように、年間110万円までの贈与財産は、相続財産に加算されないこととなっております。また特定贈与者からの贈与により取得した財産の価額は、こちらの基礎控除をした後の価額となります。

②相続時精算課税に係る土地又は建物の価額の特例の創設

 同じく令和5年度税制改正により、相続時精算課税に係る土地又は建物の価額の特例が新設されました。改正前は、相続時精算課税制度を利用して土地又は建物を贈与した場合、財産の評価額は贈与時の時価で評価することとされていましたが、改正後、その贈与の日からその特定贈与者の相続税申告書提出期限までの間に災害によって一定の被害を受けた場合には、その被害を受けた部分に相当する額を控除した残額とすることとなりました。

手続きの簡素化

 これまでは、相続時精算課税制度の適用初年度に、「贈与税申告書」と「相続時精算課税選択届出書」を税務署へ提出しておりましたが、毎年110万円以下の贈与であれば、相続時精算課税選択届出書のみを提出することになります。

 さらに、2年目以降はその年の贈与金額が110万円を超える場合は贈与税申告書を提出する必要がありますが、110万円以下となる場合には贈与税申告書の提出は不要になります。

※前回コラム【生前贈与が不利になる?加算対象期間の見直しへ】

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