日経平均株価が一時大暴落…株価下落が与える相続税への影響

はじめに

 8月5日、日経平均株価が大暴落したとのニュースが報じられました。メディアでは「史上最大の下げ幅」とも言われ、頭を抱えた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 株式は相続財産となりますので、今回の株価下落と相続税の関連性について気になっている相続人の方、これから相続に備える方もいらっしゃることと存じます。 そこで今回は、上場株式の株価評価と株価が下落した際の注意点をテーマとして取り上げたいと思います。

1 上場株式の評価方法

 株式の評価と一言にいっても、相続税の評価の際には「上場株式」と「取引相場のない株式」でその評価方法は異なります。ただし、今回の説明ではこの度の株価暴落にフォーカスし、上場株式の評価に限定して説明することとします。 

 気になる上場株式の評価ですが、下記の国税庁のHPによりますと、上場株式を評価する時期は被相続人の方がお亡くなりになられた日(以下、「相続開始日」と記載します。)の最終価格、すなわち終値で評価すると記載されています。ただし、注意点としまして、最終価額が、次の3つの価額のうち最も低い価額を超える場合は、その最も低い価額により評価することになっています。

イ 課税時期の属する月の毎日の最終価格の月平均額

ロ 課税時期の属する月の前月の毎日の最終価格の月平均額

ハ 課税時期の属する月の前々月の毎日の最終価格の月平均額

 つまり、相続開始日の終値だけでなく、上記時期の月平均額も算出し、比較した上で最も低い価額により評価することになるのです。

【国税庁HP】

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4632.htm

2 株価下落が相続税評価に与える影響

 ここで疑問に思うのは、相続開始前に保有していた株式が今回のような大暴落によって大幅に値下がりした場合の評価方法についてです。 

 結論から申し上げますと、株価が下落したとしても、原則は上記同様の方法で評価することになります。例えば、相続開始日に1株500円だった株式が相続開始後、株価暴落により1株100円になったとしても、原則では相続開始日の1株500円に基づいて評価することになるのです。逆に相続開始後に値上がりした場合においても、同様に相続開始日の株価をもとに評価することになります。ただし、株価が暴落したことにより、相続開始日の属する月、またはその前月、前々月の平均終値が著しく減少し、相続開始日の終値を下回るような場合には、その平均終値で評価することになりますので、注意が必要です。

3 遺産分割協議への影響

 ここまでは、相続時の評価はあくまで相続開始日以前の株価をもとに評価することをお伝えしました。一方、遺産分割協議が行われるのは、もちろん相続開始日よりも後になりますので、その際の評価は協議日現在の価額で行われる点に注意する必要があります。相続開始時には株価が高いのにも関わらず、その後、急落したことにより遺産分割時点で引き継ぐ株式の株価が低いとなると、相続人が不満を頂く可能性もあります。そのため、評価方法については考慮の上、協議を進める必要があります。

おわりに

 上場株式の株価の暴落は相続税の評価にも影響を与えることがご理解いただけたかと思います。また、遺産分割協議の際には協議日現在の価額で行うことになりますので、注意が必要になります。相続人間のトラブルを避けるためにもこの辺りの知識は事前に抑えておきたいところですね。

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