制度開始から約1年! この1年で振り返る相続土地国庫帰属制度の運用実績

1.相続土地国庫帰属制度とは

 当コラムでも何度か取り上げておりますが、まずは相続土地国庫帰属制度の内容について説明をさせていただきます。当制度は簡単に言いますと、「相続又は遺贈により土地の所有権を取得した相続人が、一定の要件を満たした場合には、その土地を国に引き渡すことができる制度」です。

 しかし、「せっかく取得した土地をどうして国に引き渡すの?」といった疑問の声もあるかもしれません。もちろん相続で取得した土地を有効活用できる場合はいいのですが、そうではない場合もあります。例えば、「遠方に住んでいるため相続した土地を利用する予定がない」、「管理が大変」といった場合です。

こうした場合、利用予定がない土地については、近い将来「所有者不明土地」となってしまいます。それを防ぐために、利用予定がない土地等について、一定の要件を満たせば、土地を手放し、国に引き渡すことができるとして設けられたのが当制度になります。

2.直近1年間での申請件数は?

 当制度は令和5年4月27日からスタートした新しい制度です。そこで、この約1年間(令和5年4月27日~令和6年4月30日まで)の運用実績について法務省の下記ホームページから読み解くことにします。

 まず、申請件数は2,030件で、地目別にみると、田・畑が771件で最も多く、次に宅地が744件、山林が298件、その他が217件となっています(※令和6年4月30日時点の情報です。以下同じ)。

【法務省ホームページ】https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00579.html

3.気になる運用実績について

 それでは、申請件数2,030件のうち、どれほどの数が国庫に帰属されたのでしょうか?

 答えは、「341件」です。種目別に見ると、宅地が148件で最も多く、次に農用地が87件、森林が11件、その他95件となっております。

 2,030件の申請中、帰属されたものが341件であるため、制度開始から約1年間の実際の運用実績を単純に算出すると約16%ということになります。しかし、これは令和6年4月30日現在申請中のもので、これから帰属されるものも出てくることを考えると、この結果が運用実績として一概に低いと結論付けることはできないでしょう。ただ、申請したからと言って「必ずしも土地を国に引き渡すことができる訳ではない」ということは覚えておいておきましょう。

 また、申請自体が却下された件数は8件、不承認の件数は12件となっており、それぞれの理由は次のようになっています。

(却下の理由)

・6件:現に通路の用に供されている土地(施行令第2条第1項)に該当した

・2件:境界が明らかでない土地(法第2条第3項第5号)に該当した

(不承認の理由)

・3件:土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地(法第5条第1項第2号)に該当した

・5件:国庫に帰属した後、国が管理に要する費用以外の金銭債務を法令の規定に基づき負担する土地(施行令第4条第3項第4号)に該当した 等など

4.取り下げ件数

 取り下げ件数は令和6年4月30日現在、237件となっており、理由として「自治体や国の機関による土地の有効活用が決定した」、「隣接地所有者から土地の引き受けの申出があった」、「農業委員会の調整等により農地として活用される見込みとなった」等の理由が挙げられています。

5.おわりに

 制度が開始してから約1年とまだ間もないですが、申請件数が2,000件を超え、帰属件数は341件となりました。また、却下・不承認・取り下げの理由についても公表されているため、今後、当制度の利用を検討される方は参考にしてみるのもよいでしょう。もちろん税理士といった専門家に相談してみるのもいいかもしれません。

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