コロナ後、相続税の税務調査が増加⁈ 調査結果から読み解く申告状況

はじめに

「税務調査」と聞くと、思わずゾッとする方もいらっしゃるのではないでしょうか。税務調査は法人、個人事業主だけに留まらず、遺産を相続した相続人に対しても行わることがあるため、私たちにとっても決して無関係なものではありません。                

そこで、今回のコラムでは、国税庁が昨年末である令和5年12月に公表した「令和4事務年度における相続税の調査等の状況(※)」をもとに、最新の相続税の税務調査の申告状況について読み解いていきます。

※令和4年7月~令和5年6月末までの期間を指します

令和4年度の相続税の税務調査の結果

令和3事務年度においては、令和4事務年度から、実地調査件数が8,196 件、追徴税額合計が669 億円と、ともに前事務年度より増加(対前事務年度比 129.7%、119.5%)する結果となりました(下記URL2ページ目参照)。

また、実地調査以外に、文書、電話による連絡又は来署依頼による面接により、申告漏れ、計算誤り等が指摘されるケースも増え、これらによる追徴税額は合計で87億円(対前事務年度比125.2%)にまでのぼりました(下記URL3ページ目参照)。

この結果は、世の中がコロナ渦からある程度落ち着いたため、調査件数が増えたと同時に、実地調査に代え、電話等の非接触型の対応が機能したことにより、これまで以上に申告誤り等の指摘数が増えているものと捉えることができます。

【国税庁HP】https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2023/sozoku_chosa/pdf/sozoku_chosa.pdf

申告漏れの多い財産

申告をしたからといって、その内容に誤りがあると判断されれば、追徴課税を被る場合があります。令和4年度においては、申告漏れ相続財産のうち、現預金や有価証券といった金融資産がおよそ全体の4~5割に及びました(上記URL7ページ目参照)。この結果から、金融資産は土地や家屋といった財産よりも見落としやすく、また、これらの財産の調査が重点的に行われたものとも解することができます。                    

海外にある財産の申告漏れにも要注意

令和4事務年度においては、海外資産に係る申告漏れ等の非違件数は 174 件(対前事務年度比151.3%)、海外資産に係る申告漏れ課税価格は 70 億円(同125.2%)と大きく増加しています(上記URL5ページ目参照)。相続税の申告の際には、海外にある財産まで考慮する必要があるため、申告漏れには是非とも注意したいところです。

おわりに

国税庁の令和4年度の相続税の税務調査の結果から、申告漏れ、誤り等により指摘されるケースが増えていることがご理解できたかと思います。相続税の申告の際には、最近当コラムでも取り上げました、暗号資産やNISA口座といった金融資産も対象になるため、こうしたあまり馴染みのない資産を意外と見落としてしまっている方もいるのではないでしょうか。このような財産の申告漏れを防ぐためにも、一度、専門家に相談してみるのもいいかもしれません。

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