8月はお盆の時期であり、8月10日~18日の間でお盆休暇を取得し、それぞれ故郷へお墓参りで帰省された方も多いのではないでしょうか。そんなお墓参りも、「お墓が遠方にある」や「お墓の後継者がいない」などを理由に、墓じまいや改葬するなど、時代と共に様式等が変化しつつあり、厚生労働省の調査では、2022年度に改葬が全国で15万1,076件で過去最多となったようです。(Yahooニュースより)
https://news.yahoo.co.jp/articles/df7e9c4bc311bbb15d4456aab7fb815874b1db7e
そんな墓じまいや改葬などのお墓に係る費用ですが、相続税法上はどのように取り扱われるでしょうか。
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お墓などの祭祀財産(お墓そのもの)は”非課税財産”
相続税法第12条において、墓所、墓ひょう(墓地、墓石及びおたまやのようなもののほか、これらのものの尊厳の維持に要する土地その他の物件をも含むもの)は相続税の課税価格に算入しない旨規定されている通り、通常、お墓や墓地の相続税評価額を算定する必要はなく、遺産分割協議の対象にもなりません。
そのため、生前に相続対策としてお墓を購入しておくと、課税対象となる現金を減らせるため節税となりますが、ローンで購入したお墓について、相続発生時に支払いが残っている場合、残債は相続税の債務控除とならない為ご注意下さい。(お墓自体が課税対象外となるように、その債務も債務控除対象外とする考え方)
墓じまい・改葬費用の取り扱い
ここ数年は家族や一族のあり方の変化とともに、お墓の取り扱いも変わってきました。例えば、相続によりお墓を取得した際、墓じまいや(お墓を田舎から現住地への引っ越し等を含む)改葬を検討される方も多いのではないでしょうか。それらの費用は相続税の計算時に控除することはできるのでしょうか。
結論から言うと、これらの費用は控除対象外となります。相続税を計算する際に控除できる費用は、一定の相続人および包括受遺者が負担した葬式費用です。葬式費用は下記に該当するものです。
- 葬式や葬送に際し、またはこれらの前において、火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用(仮葬式と本葬式を行ったときにはその両方にかかった費用が控除できます。)
- 遺体や遺骨の回送にかかった費用
- 葬式の前後に生じた費用で通常葬式にかかせない費用(例えば、お通夜などにかかった費用がこれに当たります。)
- 葬式に当たりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用
- 死体の捜索または死体や遺骨の運搬にかかった費用
上記の通り、墓じまいや改葬費用は上記に該当しませんが、お墓の時と同様、生前に相続人が墓じまいや改葬を済ませれば、課税対象となる現金を減らすことができます。
永代供養墓の注意点
従来は家ごとにお墓を持つこと一般的でしたが、近年は霊園や墓地の管理者が遺族に代わって供養や管理をしてくれる永代供養墓も選択肢として広がっています。永代供養墓にも、永代供養料という費用が掛かってきますが、相続税法上はどのように取り扱うでしょうか。
まず、永代供養料も上記葬式費用に該当しないことから、相続税の計算時に控除することはできませんが、こちらもお墓の時と同様、生前に被相続人が永代供養料(檀家(霊園・業者)ごとにプランも料金も異なります)をお支払いすれば課税対象となる現金を減らせます。※将来発生する管理費やお布施代等の名目で現金を残していても、相続税の計算時に控除することはできません。
お墓の今後を生前に確認しましょう
お墓を相続した後の墓じまいや改葬費用、永代供養料は相続税の計算時に控除することはできませんが、通常のお墓などの祭祀財産と同じように、生前にご本人様が用意・準備することで、課税対象となる現金を減らせることができます。将来のお墓の相続、管理などで不安を抱える方は、お盆などで一族が集まれる機会だからこそ、今後を話し合うことも大事かもしれませんね。