相続税の税務調査

税務調査とは

相続税の申告後に、その申告の可否を判断するために、管轄の税務署の職員が相続人に話を聞いたり、資料の提出を求めたりすることを税務調査と言います。

相続税の税務調査の場合、税務署の職員が訪問し、ヒアリングや資料提出を求める「任意調査」と、電話や書面等で書類の提出を依頼する「簡易な接触」というものがあります。

「任意調査」の場合でも、事前に連絡があり、日程や場所のすり合わせをした上で、担当の税務署の職員が来ますので、抜き打ちでの調査というのは基本的にありません。

税務調査が来る可能性

相続税の場合、申告後に税務調査が入る割合は、任意調査、簡易な接触合わせて、15~20%、つまり5~6件に1件の割合と言われています。

申告書の計算が間違っている、税務署の把握している預金口座や不動産が申告されていない、申告義務があるはずなのに無申告、等の場合には、ほぼ100%の確率で税務調査が来ると思って間違いありません。

また、相続財産が大きい場合(目安としては2億円〜3億円を超える場合)にも、税務調査は入りやすいと言われています。

税務調査はいつ来るのか

相続税の税務調査は、事前確認にどのくらいの時間を要するかによって、調査の時期はまちまちです。

申告書を提出して半年後に来ることもあれば、2年後に来ることもあります。

一般的には、申告期限から3年以内に来なければ、税務調査はないと言われているので、そこが1つの目安になるのではないかと思います。

税務調査に入るまでに税務署は何をやっているか

相続(人の死亡)が発生した場合、税務署には被相続人の情報が伝えられます。

その中で、生前の所得の状況や、不動産の保有状況等から見て、相続税の申告の可能性がありそうな場合には、相続税の申告の案内を送付します。

この段階では、あくまで「可能性がありそう」な場合ですので、税務署から案内があったからといって、必ずしも申告義務があるわけではありません。

その後、相続人が相続税の申告書を提出した場合には、税務署は計算があっているかという確認と、申告漏れの預金口座や不動産がないかという確認をします。

また、生前の所得の状況に比して、相続財産が著しく少なくないか、その場合、預金口座の動きを遡って資金が生前にどこかに流れていないかの確認もします。

実際に過去に弊社が経験した税務調査では20年程度、口座の動きを遡って確認されたというケースもあります。

税務調査が入った場合の対応

上記のような事前調査をして、税務調査に入る先を選ぶわけですから、税務調査に入られた場合には、税務署側は疑わしい取引や申告漏れがあるいう先入観を持ってやってきます。

申告漏れの口座や不動産があれば、納税者側のミスですので、素直に指摘に従う必要がありますが、過去の生前贈与や土地の評価等、解釈の問題となる部分については、納税者側の主張をはっきりと伝えるべきだと思います。

税務署の職員も人間ですから間違える場合もありますし、税務署の解釈が偏っている場合もあります。

ですので、過度に不安がらずに、伝えるべきことはしっかり伝える、というスタンスが良いのではないかと思います。

もちろん、相続税の税務調査に慣れた税理士が立ち会うことが、納税者の大きな味方になることは言うまでもありません。

税務調査で問題となりやすい項目

相続税の税務調査で問題となりやすい項目の筆頭は、生前贈与に関する部分です。

相続税を減らす目的で、本人名義の口座の残高を減らし、他の家族名義の口座の残高を増やすという行為は昔から行われていますが、税務調査の際に、「実際は、贈与は行われていなかったので、被相続人の財産である」という認定を受けやすい項目になります。

生前贈与関係で問題になりやすいのは主に次の2点です。

名義預金の場合

子どもや孫名義の口座に年間110万円の暦年贈与の非課税枠を使って資金移動をしている人がいますが、贈与が成立するためには、贈与をした側とされた側の双方が認識している、贈与された側がその資金を自由に使える、という2つのポイントがあり、税務調査の際に着目されるのが子どもや孫の通帳や印鑑を誰が持っていたかという点です。

例えば、贈与した側である親が通帳や印鑑を管理している場合には、税務調査において贈与と認められず、名義預金として相続財産に加算されます。

贈与税の申告をしていない場合

年間110万円超の財産を贈与した場合、贈与税の申告義務がありますが、これを怠った場合にも、贈与ではなく貸付だと認定される場合があります。

例えば、10年前に1,000万円の贈与があった場合、贈与税の時効は迎えていますが、そもそも贈与であれば贈与税の申告をしているはず、申告をしていない以上は、当事者には贈与の認識はない、という理屈で相続財産に含められます。

税務調査に入られないために

税務調査はどの納税義務者にも平等に入るのか?

答えは「No」です。

申告漏れの可能性の高い人、追徴税額が多額になりそうな人のところに入ります。

逆に言えば、申告漏れの可能性の低い人、追徴税額がなさそうな人のところには入りません。

税務署の調査官は申告書を一目見ただけで、その申告書のクオリティが分かります。

申告書のクオリティが低ければ、申告漏れの可能性があるのではないかと思って重点的に確認をしますし、クオリティが高ければ申告漏れの可能性は低いと思って、あまり確認をしません。

つまり、税務調査に入られないための最大の防御策はクオリティの高い申告書を提出することです。

そのためには、相続税に精通した税理士による申告書の作成が必須とも言えます。

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