Archive for the ‘未分類’ Category
空き家譲渡特例の活用
はじめに
日本の空き家の現状について、5年に一度総務省によって行われる「住宅・土地統計調査」によると、長期にわたって利用されていない住宅などの空き家が2018年は349万戸あるとされ、2023年の調査では更に増えると予想されています。
空き家の取得経緯の中で相続が半数以上を占めているとされ、空き家対策の一部として開始されたのが「空き家譲渡特例」になります。
空き家譲渡特例の概要
空き家譲渡特例とは、被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例といい、相続または遺贈によって空き家またはその敷地等を取得した相続人等が、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売却し、一定の要件を満たす場合、その売却に係る譲渡所得金額から最大3,000万円を控除できる特例になります。
主な適用要件は下記となります。
- 売却した人が、相続または遺贈により空き家およびその敷地等を取得したこと。
- 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
- 売却代金が1億円以下であること。
〇「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
最後に
相続または遺贈により家及び土地を取得したけど、特に活用せず放置している方もいらっしゃると思います。当制度の適用を受けるためには相続から3年以内に売却をしないといけないため、当制度にご興味がある方は、お早めに専門の税理士にご相談されることをおすすめ致します。
某タレント事務所問題で話題の「事業承継税」について
2023年も残りわずかとなりました。東京都心では11月初旬にもかかわらず気温が10度を下回り、慌てて冬支度を初めて方々も多いのではないでしょうか。STCグループが事務所を有する沖縄県でも、ひんやりとした秋風を感じるようになったとのことで、1年の終わりを感じるのと同時に、年の瀬の到来をひしひしと感じております。インフルエンザ感染の報告も増えてきておりますが、体調管理に気を付け、季節の変わり目を乗り越えましょう。
さて、法人の後継者問題解決の一助として創設られた「法人版事業承継税制」の申請期限が2024年3月31日(特例措置のみ)と期限が差し迫る中、某タレント事務所のスキャンダルをきっかけに当制度に興味を持つ方々が多くなったことから、今回、「法人版事業承継税制」をご紹介させて頂きます。
某タレント事務所のスキャンダルと法人版事業承継税制
そもそも、なぜあの話題と法人版事業承継税制が話題となったのか。まず、当該事務所のスキャンダルの事実が確定した後、問題の責任を代表取締役Jがどのように取るのかが注目された中、結局代表取締役の地位から退くことなく、また保有株式の譲渡も検討せず、職務により責任を果たしていく、との発表がありました。
これが、当該事務所の元代表取締役社長がなくなった際に発生した、当該事務所の株式を相続したことによる、巨額な相続税が免除される「法人版事業承継税制」の適用を受けるためではないかと指摘されたのです。つまり、スキャンダルによる被害者の救済の為ではなく、相続税課税を逃れるための代表取締役留任とみられたのです。
「法人版事業承継税制」について
法人版事業承継税制は、経営承継円滑化法の基、中小企業の後継者の税負担を軽減するための特例措置であり、平成30年度税制改正により大きく改正され、10年間限定の特例措置が設けられました。具体的には、贈与税や相続税の納税を猶予・免除する制度であり、会社の株式等を対象とする「法人版事業承継税制」と、別途、個人事業者の事業用資産を対象とする「個人版事業承継税制」があります(今回個人版事業承継税制は省略)。
この法人版事業承継税制には、「一般措置」と「特例措置」の2つの制度があります。特例措置については、事前の計画策定等や適用期限が設けられていますが、納税猶予の対象となる非上場株式等の制限(総株式数の最大3分の2まで)の撤廃や納税猶予割合の引上げ(80%から100%)がされているなどの違いがあります。
「一般措置」と「特例措置」の詳しい解説や、当制度により贈与税・相続税の納税猶予・免除を受ける際の具体的な手続きについては、添付のパンフレットよりご確認頂けます。
〇「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(法人版事業承継税制)のあらまし(令和5年6月)」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0023006-133_01.pdf
指摘された問題点
法人版事業承継税制の特例措置による相続税の納税猶予・免除を検討した際、原則として、会社の後継者や承継時までの経営計画を記載した「特例承継計画の提出」を令和6年3月31日までに行い、相続開始後10か月以内に都道府県知事の「円滑法の認定」を受け、5年間代表者であること、5年間株式等を保有し続けること(譲渡等を行わないこと)が要件となります。
某タレント事務所の代表取締役Jの職位留任と保有株式譲渡なしの意向は、上記要件の継続適用の為だったのでしょうか。その後代表取締役Jは、全ての関連会社の代表取締役を退くことが発表されましたが、その場合、猶予取消となることとなる為、相続税がどのくらいの規模になるのか気になるところです。
法人版事業承継税制の有益なご活用を
法人版事業承継税制は、後継者である受贈者・相続人等が、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続した場合に、贈与税や相続税の納税を猶予・免除する制度ですが、特例措置の適用にあたっては、必要手続きも多く、また長期的な承継スケジュールを立てる必要があり、若干ハードルの高い制度となっております。制度適用の有利不利も一概に判断できない為、当制度にご興味がある場合は、お早目に専門の税理士等にご相談されることおすすめ致します。
〇国税庁HP「法人版事業承継税制」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/jigyo-shokei/houjin.htm
学費援助に贈与税…⁉ 非課税制度を用いた節税方法の紹介
学費援助と贈与税の関係
1年間に贈与を受けた金額が110万円を超えてしまうと、受贈者に贈与税が発生します。
ということは、祖父母などから孫へ学費等の教育資金を援助する場合においても、110万円を超える贈与があった場合には贈与税がかかるということになります。
しかし、教育資金の贈与は主として高齢層が保有している資産を若い世代へ受け渡し、結果として経済の活性化に繋がるといった理由から、一定の金額までは非課税枠が設けられています。
教育資金贈与の非課税枠
平成25年4月1日から令和8年3月31日までの間に、30歳未満の方が教育資金に充てるため、金融機関等との一定の契約に基づき、受贈者の直系尊属(祖父母など)から教育資金の提供を受けた場合等(※1)にはその金額の内、1,500万円までは非課税となります。
ただし、この場合、受贈者である30歳未満の方が、金融機関等に「教育資金非課税申告書」の提出等をする必要があります。さらに、教育資金の支払を行った場合には、支払に充てた金銭に係る領収書などその支払の事実を証する書類等を提出期限までに金融機関等に提出する必要があることにも注意しましょう(下記URL2ページ目「2.教育資金口座からの払出し及び教育資金の支払」参照)。
なお、契約中に贈与者が亡くなった場合には別途、金融機関等に届出を提出する必要がありますので、ご注意ください(下記URL3ページ目「3.契約期間中に『贈与者が死亡した場合』の取扱い等」参照)。
※1 次のようなケースが該当します。
①信託受益権を取得した場合
②書面による贈与により取得した金銭を銀行等に預入をした場合
③書面による贈与により取得した金銭等で証券会社等で有価証券を購入した場合
【国税庁HP-祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度の あらまし】
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku-zoyo/201304/pdf/0023004-114_02.pdf
対象となる教育資金贈与の例
入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費又は入学試験の検定料、学用品の購入費、修学旅行費や学校給食費など学校等における教育に伴って必要な費用などが対象です。
その他、学校等以外の者に対して直接支払われる塾や習い事といった費用(詳細については上記URLの2ページ目を参照)に関しては500万円を限度として対象となります。
改正による期限延長と注意点
教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度は令和5年度の税制改正で、期限が令和5年3月31日から令和8年3月31日までに延長されることになりました。
本制度は、確かに1,500万円の非課税枠が設けられていることにより贈与税がかからずに贈与が可能な点は魅力的ですが、贈与者が亡くなった際、教育資金口座に残っている残高については相続財産に含められてしまうため注意が必要です。また、受贈者の対象年齢が30歳未満となっていることから、受贈者が30歳以上となっても尚、教育資金口座に残っている資金に関しては、贈与税の対象となってしまうため、こちらも注意する必要があります。
これらのことから、本制度のご利用前には事前に贈与する金額や受贈者の年齢といった事項を鑑みたうえで、手続きを進めることが望ましいと言えるでしょう。もし、ご自身で判断することが不安な場合には税理士といった専門家に相談してみるのもよいかもしれません。
まだ間に合う!タワマン節税改正の抜け道②
以前のコラムでも取り上げました「タワマン節税」に関連して、評価方法の改正に向けて新たに動きがありましたので今回こちらをご紹介します。国税庁は、一般の意見公募を踏まえ、新たにタワーマンションも含めた「居住用の区分所有財産」についての評価方法を提案しました。
評価の見直しの対象となる範囲とは?
見直し対象となるものは、「区分所有登記がされた居住用のマンション」です。例えば、分譲マンション、タワーマンション、さらには高層階マンションのみならず、中低層階マンションも挙げられます。ただし、居住用であっても2階建て以下のマンション、二世帯住宅は見直しの対象から除かれ、区分所有オフィスなど事業用のものも同様に除かれます。
新しい評価方法とは?
土地と建物の相続税評価額は評価水準をベースに4つのパターンに分けられます。
①評価水準>1の場合(現行の相続税評価が市場価格より高い)
現行の相続税評価額×区分所有補正率(評価乖離率)
②0.6≦評価水準≦1の場合(現行の相続税評価が市場価格と同程度)
現行の相続税評価額
③0<評価水準≦0.6の場合(現行の相続税評価が市場価格より低い)
現行の相続税評価額×区分所有補正率(評価乖離率)×0.6
④評価水準≦0の場合
評価額0
今回の見直し案では、市場評価額と相続税評価に乖離がある場合にはそれぞれ、現行の相続税評価をベースに補正率を加味して評価する方法が提案されています。なお、市場評価額と相続税評価の乖離状況を示す「評価水準」・「評価乖離」については下記のリンクをご参照下さい。
「e-govパブリックコメント」Microsoft Word – 01_ ‰ßÆPœ.doc (e-gov.go.jp)
いつから新しい評価になるのか??
令和6年1月1日以降に相続、遺贈、贈与があった場合には今回ご紹介した新しい評価方法が適用されます。つまり、令和5年中はまだこの新しい評価方法が適用されません。しかし、市場価額と相続税評価が乖離しているものについては、場合によっては財産評価基本通達6項(総則6項)の適用がされ、通達の定めによって評価することが著しく不適当であると認められる財産の価額については、国税庁長官の指示を受けて評価される可能性があるため注意が必要です。
「相続土地国庫帰属制度」初の適用事例!
第1号は富山県内の土地2件!
以前こちらのホームページでも紹介しました「相続土地国庫帰属制度」ですが、4月に制度が開始されてから令和5年8月末時点で申請数が885件に上る中、初めて富山県内にある土地2件について申請が承認され国庫に帰属したことを法務省が明かしました。
【法務省HP 法務大臣閣議後記者会見の概要】
https://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho08_00450.html
承認後の流れは?
国庫帰属の申請が承認された場合、申請者は負担金を期限内(負担金の通知が到達した翌日から30日以内)に納付する必要があります。なお、負担金額が気になる方は法務省のホームぺージに自動計算シートが掲載されていますので、活用してみてはいかがでしょうか。
【法務省HP 相続土地国庫帰属制度の負担金】
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00471.html
この負担金の納付によって土地の所有権が国に移転し、所有権移転登記を国が行います。また、住所変更登記や相続登記がされていない場合、これらも国が代位登記を行います。したがって、申請者は登記を行う必要はありません。
どうなる?今後の動きに注目
処分に困った土地を国に引き取ってもらえる「相続土地国庫帰属制度」ですが、要件が厳しく、制度を使いたくても使えないという方が多いかと思われます。要件の緩和など誰でも使いやすい制度になると良いですね。
今後も制度の動きに注目していきたいと思います。
配偶者居住権はご存じでしょうか?
配偶者居住権とは
配偶者居住権とは、夫婦のどちらかが亡くなった場合に、亡くなった方が所有していた建物を残された配偶者が亡くなるまで
又は一定の期間
、無償で住むことができる権利です。
この権利により、建物を相続する際に建物の所有権と居住権をわけて相続することができるようになりました。
配偶者居住権の要件
配偶者居住権が成立するためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 配偶者が被相続人(亡くなった方)の財産である建物に相続開始の時に居住していたこと
- ①遺産分割、②遺贈、③死因贈与、④家庭裁判所の審判、のいずれかにより配偶者居住権を取得したこと
- 被相続人が相続開始の時において居住建物を配偶者以外の者と共有していないこと
- 配偶者が被相続人の法律上の配偶者であること
配偶者居住権のメリット、デメリット
メリット
- 建物の所有権と居住権をわけて相続することができるため、相続できる資産のバリエーションが増える。
- 配偶者が亡くなった場合の、建物の2次相続の心配がいらなくなる。
- 配偶者居住権は譲渡することはできないが、所有者の承諾を得れば第三者へ賃貸させることができる。
デメリット
- 配偶者は、建物の通常の必要費(固定資産税や通常の修繕費等)を負担する必要がある。
- 不動産の譲渡・売却をすることができない。
- 2次相続まで考えた場合、税負担が増える可能性がある。
最後に
配偶者居住権は残された配偶者の生活への配慮等の観点からできた制度になりますが、配偶者居住権を設定することが一概に良い選択とは限りません。
相続人にとって良い選択をすることができるには、さまざまな観点から検討する必要ございます。
活用する?放棄する?売却する?「相続土地国庫帰属制度」を理解して、不要な土地の相続に備えましょう。
前回のコラムでは、「相続登記の申請義務化」をご紹介しました。こちらの制度は、所有者不明土地等の発生予防を目的として、相続により不動産を取得した相続人は、相続登記の申請をしなければならない、というものでした。(詳しくは前回コラムをご参照下さい。)
所有者不明土地問題を解消すべく、法務省は別途、「相続土地国庫帰属制度」を創設し、相続により取得した土地を国に帰属させることを可能とする制度を施行しております。
相続土地国庫帰属制度について
相続土地国庫帰属制度とは、相続や遺贈によって土地の所有権を取得した人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国に引き渡すことができる制度です(令和5年4月27日施行)。
この制度の目的は、「相続した土地が遠い田舎の土地で今後の活用予定がない」「処分できずにいるが管理コストが大きく困っている」といった不要な相続した土地について、国庫に帰属させ、国が管理・処分することとし、所有者不明土地の発生予防を図っております。
「相続放棄」との違い
不要な土地を相続したくない場合、「相続放棄」により相続した土地を放棄することができます。しかし、相続放棄を選択すると、被相続人の権利義務を一切受け継がない為、その他の必要財産等も全て放棄することとなります。
相続土地国庫帰属制度では、相続又は遺贈により宅地等の土地の所有権を相続した人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国に帰属させることができるため、不要な土地のみを処分する手段として、新たに選択することが可能となりました。
※なお当制度は、制度開始前の令和5年4月27日より前に相続した土地でも申請可能となります。
申請可能な一定の要件とは
当制度ですが、全ての土地を国に帰属させることはできず、「法令で定める引き取ることができない土地」に該当しない土地である必要がございます。(相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律【令和3年法律第25号】)
〇申請をすることができない相続した土地
- 建物がある土地
- 担保権や使用収益件が設定されている土地
- 他人の利用が予定されている土地
- 土壌汚染がされている土地
- 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
〇承認を受けることができない相続した土地
- 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
- 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
- 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
- 隣接する土地の所有者等との訴訟によらなければ管理・処分ができない土地
- その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地
審査手数料と負担金
当然ながら申請には費用が発生し、審査手数料として、土地一筆当たり14,000円と、審査手数料に相当する額の収入印紙代をご負担いただきます。
そして、土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出された、10年分の土地管理費用として負担金をお支払いすることになります。負担金は、「宅地」「農地」「森林」「その他」の区分に応じ決定され、宅地の場合、原則一筆当たり20万円となります(地域、面積などにより変動あり)。
不要な土地の相続前に、処分の手段を検討しましょう
相続土地国庫帰属制度について、実質的にハードルが高いように感じます。当制度の申請が可能な土地は、活用手段も幅広く、買い手が見つかる可能性が高いため、本当に不要であれば、売却による処分を選択されることが多いのではないでしょうか。しかしながら、不要な相続した土地の処分手段の拡充として今後の制度運用に期待したいです。
相続の対象で不要となる土地がある場合、相続後の売却や相続土地国庫帰属制度の活用、相続放棄などさまざまな処分手段がございます。その土地の価値や権利関係をよく確認し、その状況に合わせた手続きを検討されてはいかがでしょうか。
〇法務省HP
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html#mokuji6
〇ご案内パンフレット
https://www.moj.go.jp/content/001390195.pdf
いつから開始?相続登記の申請義務化へ
相続登記とは
遺産分割協議、申告書の提出等も終わり、相続の手続きはすべて終わったと思っている方もいるのではないのでしょうか?
しかし、相続により取得した土地や建物といった不動産については、その所有者が誰のものか明らかにしなければなりません。そのため、これらの不動産について法務局に申請し、不動産登記簿の名義を変更する必要があります。この手続のことを「相続登記」といいます。
これまで相続登記に関しては任意での申請とされていましたが、相続登記がされていない所有者不明の土地が全国で増加したことから、その問題解決のために令和3年に法改正がなされ、相続登記が義務化されることになりました。
【法務省 HP 「相続登記の申請」はじめの一歩! 参照】https://www.moj.go.jp/content/001397792.pdf
相続登記の義務化はいつから開始?
法改正により、相続人が土地や建物といった不動産を取得したことを知った日から「3年以内」に、相続登記をしなければいけないことになりました。そして、この制度は「令和6年4月1日」から開始されます。
ただし、令和6年4月1日より前に相続した不動産についても、相続登記がされていなければ、申請義務の対象になるため注意が必要となります。
【法務省 HP備えて安心!令和6年4月1日から相続登記が義務化されます!参照】 https://www.moj.go.jp/content/001397793.pdf
相続登記をしなかった場合、ペナルティ(罰則)はある?
結論から申し上げますと、罰則はあります。 具体的には、正当な理由(※)がなく、相続登記をしなかった場合には10万円以下の過料が科される可能性があります。
なお、早期の遺産分割が難しい場合には、「相続人申告登記」という簡便な手続きを行うことにより相続登記の義務を果たすことも可能です。
※「正当な理由」とは主に次のようなものが挙げられます。 (1)相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケース (2)遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているケース (3)申請義務を負う相続人自身に重病等の事情があるケース
いずれにせよ令和6年4月1日より相続登記は義務化されるため、現在、相続が発生している方や、今後、相続が発生しそうな方は今のうちから相続登記の義務化に備えておく必要があるといえるでしょう。
マイホームの購入・改築予定者必見!相続時精算課税制度の特例
最大で3,500万円の非課税枠が利用可能!
マイホームの購入や改築にあたり、両親や祖父母などから資金援助を受ける方も多いのではないでしょうか?過去のコラムで紹介した「直系尊属からの住宅取得等資金贈与の非課税制度」と「相続時精算課税制度」をダブルで利用することで最大3,500万円の贈与税の非課税の適用を受けることが可能です。
相続時精算課税制度の特例は令和5年で終了!?
相続時精算課税制度は基本的には、60歳以上の両親や祖父母である贈与者でないと適用を受けられません。しかし、特例として、令和5年12月31日までの間に行う贈与で、マイホームの購入や改築のための金銭の贈与であれば、60歳未満の贈与者でも適用が受けることが出来ます。また、この特例制度は延長される可能性は低く、令和6年以降は適用が出来なくなる可能性があります。
注意しなければならない点
①相続時精算課税制度は撤回できない
現行法では、例えば父から相続時精算課税制度に基づく贈与を受けた場合には、今後二度と暦年贈与を選択することができない制度となっています。
②贈与者の相続税の際に持ち戻して相続税を計算する
相続時精算課税制度は文字通り、相続の際に精算します。よって、贈与者が死亡した場合には、既に贈与した財産でも持ち戻して相続税の計算をします。決して贈与税がかからず節税になるというわけではなく、あくまで税金を先送りしているということに注意しなければなりません。
③相続時精算課税制度選択届出書の提出が必要
最大2,500万円の非課税を受けられる相続時精算課税制度ですが、この制度は贈与税の申告期限内に必ず「相続時精算課税制度選択届出書」を提出しなければなりません。提出がもれてしまうと暦年贈与となってしまい本来かからなかった税金が発生してしまう恐れがあり、注意が必要です。
法人だけじゃない!個人版事業承継税制
個人版事業承継税制とは
前回のコラムでは「法人版事業承継税制」について紹介しましたが、法人だけが優遇されているわけではありません。
もちろん、「個人版事業承継税制」もあります。
「個人版事業承継税制」は、令和元年度税制改正において創設された制度で、個人事業の後継者が特定事業用資産を贈与又は相続等により取得した場合に、一定の要件を満たすことで、①その特定事業用資産に係る贈与税・相続税の納税を猶予し、②後継者の死亡等により、猶予されている贈与税・相続税の納税が免除される制度です。
基本的な考え方は法人版(特例措置)と同じですが、異なる部分もあります。
個人版 | 法人版(特例措置) | |
事前の計画策定 | 個人事業承継計画の提出 (令和6年3月31日まで) | 特例承継計画の提出 (提出期限は個人版と同様) |
適用期限 | 次の期間の贈与・相続等 (平成31年1月1日から令和10年12月31日まで) | 次の期間の贈与・相続等 (平成30年1月1日から令和9年12月31日まで) |
対象資産 | 特定事業用資産(※) | 非上場株式等 |
雇用確保要件 | なし | あり |
①宅地等(400㎡まで)
②建物(床面積800㎡まで)
③減価償却資産で一定のもの
小規模宅地等の特例との関係性
先代事業者等(被相続人)が死亡し、相続税申告の際に小規模宅地等の特例を適用する場合には、個人版事業承継税制の適用については制限を受ける場合があります。
適用を受ける小規模宅地等の区分 | 個人版事業承継税制の適用 | |
① | 特定事業用宅地等 | 不可 |
② | 特定同族会社事業用宅地等 | 可(ただし、一定の計算式による限度面積あり) |
③ | 貸付事業用宅地等 | 可(ただし、一定の計算式による限度面積あり) |
④ | 特定居住用宅地等 | 可(制限なし) |
個人版事業承継税制は、特定事業用資産に係る相続税・贈与税が猶予・免除されるとてもお得な制度です。ただし、後継者以外の相続人に対しては恩恵がありません(小規模宅地等の特例については宅地等の評価額が下がるため相続人全員の相続税額が安くなる)。
個人版事業承継税制の適用をする際には、「争続」になってしまわないよう事前に相続人全員の理解を得ることをおすすめします。
※国税庁パンフレット【国税庁 HP 個人の事業用資産についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(個人版事業承継税制)のあらまし】
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0023006-133_04.pdf