人が亡くなると、基本的には法定相続人は相続をすることになります(ここでは、一旦「相続放棄」については考慮しないことにします)。
この法定相続人ですが、必ずしも1人というわけではなく、複数人存在する場合もあります。
それでは、法定相続人が1人の場合と複数人いる場合では税額は同じになるのでしょうか?
結論から申し上げますと、答えは“No”です。
相続税は配偶者の有無や法定相続人の人数によって、税額が異なる仕組みとなっており、それをわかりやすくまとめたのが、次に紹介する「早見表」と呼ばれる表です。
このページの目次
1. 早見表
相続税における「早見表」とは簡単に言いますと、「おおまかな相続税額を把握できる表」とイメージして頂いて差し支えないでしょう。
言葉で説明するより、表を見た方がわかりやすいと思いますので、まずは下記の表をご参照ください。
(単位:万円)
遺産額 | 相続税 | 配偶者あり | 配偶者なし | ||||
子1人 | 子2人 | 子3人 | 子1人 | 子2人 | 子3人 | ||
4,000万円 |
総額 軽減後 |
0 0 |
0 0 |
0 0 |
40
|
40
|
40
|
5,000万円 |
総額 軽減後 |
80 0 |
20 0 |
0 0 |
160
|
80
|
20
|
7,000万円 |
総額 軽減後 |
320 0 |
225 0 |
160 0 |
480
|
320
|
220
|
9,000万円 |
総額 軽減後 |
620 0 |
480 0 |
400 0 |
920
|
620
|
480
|
1億円 |
総額 軽減後 |
770 0 |
630 0 |
525 0 |
1,220
|
770
|
630
|
1,5億円 |
総額 軽減後 |
1,840 0 |
1,495 0 |
1,330 0 |
2,860
|
1,840
|
1,440
|
2億円 |
総額 軽減後 |
3,340 668 |
2,700 540 |
2,435 487 |
4,860
|
3,340
|
2,460
|
3億円 |
総額 軽減後 |
6,920 3,229 |
5,720 2,669 |
5,080 2,371 |
9,180
|
6,920
|
5,460
|
5億円 |
総額 軽減後 |
15,210 7,605 |
13,110 6,555 |
11,925 5,962 |
19,000
|
15,210
|
12,980
|
7億円 |
総額 軽減後 |
24,500 12,250 |
21,740 10,870 |
19,770 9,885 |
29,320
|
24,500
|
21,240
|
9億円 |
総額 軽減後 |
34,500 17,250 |
30,870 15,435 |
28,770 14,385 |
40.320
|
34,500
|
30,240
|
10億円 |
総額 軽減後 |
39,500 19,750 |
35,620 17,810 |
33,270 16,635 |
45,820
|
39,500
|
35,000
|
※軽減後とは、相続税の配偶者控除を最大限適用した場合の相続税額の合計額を指します。
ご覧の通り、早見表に照らすと、相続税は遺産総額(財産評価額)配偶者の有無および法定相続人の人数によって、税額が変動していることがわかります。
それでは、説例を用いて実際に計算していきます。
2. 説例
【前提】
被相続人:父
相続人:母、長男、長女
遺産総額:1億円
遺産分割:母 6,000万円、長男 2,000万円、長女 2,000万円
この場合、表に照らすと、遺産総額が1億円で、「配偶者あり、子2人」となるので、相続税の総額は630万円となります。
それでは、この630万円をどのように算出しているのかについて説明していきます。
①課税対象となる金額の算出
今回の場合は、遺産総額が1億円(6,000万円+2,000万円+2,000万円)であり、基本的にはこの1億円が課税対象となる金額(以下「課税価格」といいます)の合計額となり、相続税額を計算していく上で基となる金額になります。
ただし、この遺産総額は現預金や不動産といったプラスの財産から借金やローンといったマイナスの財産を差し引いて算出することになるため、注意が必要です(説例では、すでに、差し引かれたものと仮定します)。
また、単純に相続人の遺産額を合計した遺産総額が必ずしも課税価格になるわけではありません。
例えば、長男が制限納税義務者(※)に該当し、長男の取得財産が国外にあるような場合には、その分は課税価格に含まれないため、遺産総額自体は1億円ですが、課税価格は8,000万円となります。
そのため、制限納税義務者および国外財産の有無を確認した上で、集計する必要があります(説例では、制限納税義務者には該当しないことを前提として進めていきます)。
(※)相続または遺贈により財産を取得した際に、その財産取得時において、日本に住所を有しない者をいいます。
制限納税義務者(非居住無制限納税義務者に該当する場合を除く)、取得財産の内、国内にある財産のみが課税対象となるため、国外財産を取得したとしても、その分については課税されないことになります。
②基礎控除
相続税には「基礎控除」が設けられており、課税価格から一定額を控除できることになっています。
基礎控除の計算方法は次の通りです。
基礎控除=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
今回の場合には法定相続人が3人(母、長男、長女)であるため、基礎控除は、3,000万円+600万円×3人=4,800万円となります。
そして、この金額を課税価格から差し引くことができるため、課税価格は、1億円-4,800万円=5,200万円となります。
③法定相続分を算出
課税価格が5,200万円のため、この金額を法定相続分で按分すると、次のようになります。
母:5,200万円×1/2=2,600万円
長男・長女:5,200×1/4=1,300万円
④相続税額の総額の算出
法定相続分を算出した後、相続税の税率を乗じて、相続人ごとの税額を算出します。
この乗じる税率ですが、「相続税の速算表」と呼ばれる表に記載があり、国税庁HPからも確認することができます。
○ 相続税の速算表 | ||
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
【出典】国税庁HP
母・長男・長女の法定相続分は1,000万円を超え、3,000万円以下なので、速算表に照らすと、各々の相続税額は次のようになります。
母:2,600万円×15%-50万円=340万円
長男・長女:1,300万円×15%-50万円=145万円
そして、母・長男・長女の相続税の総額は、340万円+145万円×2=630万円となり、早見表の金額と合致することになります。
このような計算過程を経た上で、算出された税額が早見表から確認できることになります。
⑤各人の相続税
早見表を用いて、相続税額の総額を求めた後は、各々の相続人が負担する相続税を計算することになります。
母の場合には、6,000万円の相続財産を取得したことになりますので、按分すると相続税は、630万円×6,000万円/1億円=378万円となるはずです。
しかし、配偶者の場合には、「配偶者の税額軽減」という制度があり、法定相続分または1億6,000万円までは相続税がかからないようになっております。
そのため、今回の場合、母の相続税額は0円となります。
一方、長男・長女は2,000万円の相続財産を取得していますから、630万円×2,000万円/1億円=126万円となります。
そのため、今回のような場合、相続税は総額で252万円(母:0円 長男:126万円 長女:126万円)となるのです。
3. まとめ
このように見表を用いれば、相続税の大まかな税額を簡単に把握することができるので、相続開始の初期段階または生前の内に、税額をシュミレーションしてみるのもいいかもしれません。
ただし、上記に記載した「配偶者の税額軽減」のほか、「小規模宅地等の特例」など相続税には税額控除を受けられる制度がいくつかございますので、より詳しい内容は専門家にご相談することをお勧めいたします。
弊社におきましても、ご相談から申告手続きまで幅広く対応しておりますので、相続に関することで何か気になることがございましたら、お気軽にご連絡を頂ければと思います。