相続手続きの流れ

相続の手続きは、遺言書の有無の確認から、相続人・相続財産の確認、遺産分割協議など手続きが多く、また、煩雑であるため、その流れのすべてを理解している方はそう多くはいないでしょう。

そこで、ここでは、その相続の手続きについて、発生から申告・納付に至るまでの流れについて順を追って説明していきたいと思います。

1. 相続手続きの全体像

相続手続きの大まかな流れは次のようになります。

①死亡から7日以内

  • 死亡診断書の受け取り
  • 死亡届の提出

②死亡から10日以内

  • 葬儀
  • 年金受給手続きの停止

③死亡から14日以内

  • 健康保険および介護保険の資格喪失届の提出
  • 世帯主変更届の提出
  • 生命保険金の受け取り
  • 金融機関への連絡
  • 公共料金や各種サービスと変更の解約

④死亡から3か月以内

  • 遺言書の確認、検認
  • 相続人、相続財産の調査
  • 遺産分割協議の開始
  • 相続放棄、限定承認

⑤死亡から4カ月以内

  • 所得税の準確定申告

⑥死亡から10カ月以内

  • 遺産分割協議書の作成
  • 各種の相続手続き
  • 相続税申告と納付手続き

このように、相続が発生すると、申告・納付に至るまでに様々な手続きがあります。

また、期限も設けられているため、しっかり予定を立て、計画的に進めていくことが重要になります。

2. 各種手続き

それでは、1で示した手続きの流れの内、より重要な点をピックアップして説明していきます。

遺言書の有無の確認・検認

人が亡くなると、まず初めに7日以内に死亡届を提出し、その後、葬儀の準備や故人の年金受給停止手続きなどに取り掛かる必要があります。

そして、これらの手続きと並行して、できるだけ早めに、遺言書の有無を確認するようにします。

遺言書は、ご自身で保管されている場合もありますが、銀行の貸金庫に預けられていたり、遺言により遺産を引き継ぐ方が保管している場合もあります。また、司法書士、弁護士などに預けられていることもあります。

また、見つかった遺言書が自筆証書遺言の場合には、これを家庭裁判所に提出して「検認(※)」してもらうことになります。

(※)「検認」とは,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして,遺言書の偽造・変造を防止するための手続のことをいいます。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。

相続人・相続財産の調査、確認

被相続人が残した財産は相続人であれば誰でも相続できるというわけではなく、相続できる人は民法で決められています(この民法の規定により相続する人のことを「法定相続人」といいます)。

そのため、戸籍謄本などの書類を集めた上で、正確な相続関係を把握する必要があります。

また、被相続人が残した相続財産の調査も行う必要があります。

相続財産には、預貯金や土地・建物、自動車、貴金属、株式といったプラスとなる財産の他、借金や住宅ローンといったマイナスとなる財産も含まれることに注意が必要です。

遺産分割協議

「遺産分割協議」とは、その名の通り、遺産を分けるために相続人同士で話し合いをすることです。

相続人および相続財産が確定したら、遺産分割協議を行うことになりますが、相続人全員の参加および合意が必須となっているため、一人でも反対する人がいるような場合には、なかなか協議がまとまらなくなってしまいます。

そのため、申告期限に間に合わせるためにも、なるべく早めに取り掛かることが重要です(どうしても相続人同士で協議がまとまらない場合には、家庭裁判所の力を借り、調停や審判で遺産を分割することになります)。

相続方法の選択

相続方法としては主に、次の3つの方法があります。

単純承認

相続の際には、預貯金や不動産といったプラスの財産以外にも、マイナスの財産も引き継ぐことになりますが、この相続の方法のことを「単純承認」といいます。

単純承認は、特別な手続きを要しないため、相続の開始を知った日から3か月以内に相続放棄や限定承認をしなかった場合には、その名の通り、単純に承認したものとみなされ、マイナスの財産があった場合でも引き継ぐことになる点に注意が必要です。

相続放棄

相続財産にはプラスの財産よりもマイナスの財産の方が大きいこともあり得ます。このような場合に、一切の財産を相続しないことを「相続放棄」といいます。

ただし、相続放棄をするには相続の開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所で手続きを行い、承認を得る必要があります。

限定承認

「限定承認」は、マイナスの財産がどのぐらいあるか不明であり、相続人が相続によって得たプラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐというものです。

言い換えると、相続した預貯金等のプラスの財産の範囲内だけで、借金等の返済に充てることを条件として相続することをいいます。

限定承認も相続放棄と同様、相続の開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所にて手続きを行う必要がある点に注意が必要です。

準確定申告

「準確定申告」とは被相続人の生前の所得税について相続人が確定申告をすることです。

準確定申告は相続人が共同して行う必要があり、相続の開始を知った日から4カ月以内に申告する必要があります。

遺産分割協議書の作成

遺産分割協議がまとまった後は、相続登記の前に相続人で話し合った内容を遺産分割協議書として作成しておく必要があります。

ただし、遺産分割協議書には相続人全員の署名押印が必要となる点に注意が必要です(一人でも欠けている場合には、無効となります)。

相続登記

不動産を相続した場合には、その名義を変更するために登記を行う必要があります。

一般的には、「名義変更」とも言われます。

相続登記に期限はありませんが、登記をしていないと後々、不動産の売却や担保の設定をしようと思ったときに、それができなくなってしまう可能性があります。

そのため、遺産分割協議で誰が不動産を相続するのか決まり次第、なるべく早めに相続登記を行うことが大切です。

相続税の申告

相続人は相続の開始を知った日から10カ月以内に相続税を申告する必要があります。

遺産分割協議がまとまらない場合にも未分割の状態で期限内に申告・納付をすることに注意が必要です。

この場合には遺産分割協議がまとまった後に再度申告することになります。

このように、相続手続きには流れがあり、また、期限も設けられているため、可能な限り、相続が発生する前から対策をしておくことが大切です。

しかし、対策をしようにも、親族間に関わることであり、なかなか知人、友人に相談を持ち掛けることが難しいかもしれません。

弊社ではそのようなお悩みも含めて対応しておりますので、相続に関することで何か気になることがございましたら、まずは、お気軽にご相談を頂ければと思います。

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