不動産、生前贈与、生命保険等を活用する方法

不動産を活用した相続税の節税

一般的に、土地や建物といった不動産は現預金と比較して相続税の負担が小さくなる仕組みとなっています。

例えば、手持ちの現預金を賃貸用不動産に換えて人に貸し出すことにより、資産の相続税評価額を低くすることが可能です。

更に、その賃貸用不動産を取得する際に銀行から借入れをすることにより借入金という債務、いわゆるマイナスの財産を作る(相続財産から控除する)ことができます。

これを活用することで、資産の相続税評価額を更に抑えることが可能になります。

さらに、居住用に使っている土地(宅地)などに対しては、相続税の評価額を最大で8割減らすことができる「小規模宅地等の特例」が使える場合があります。

ただし、最近の裁判例では、相続税の節税を前提とした不動産購入など極端な相続税対策は認められないという判決が出されているケースがありますので注意が必要です。

生前贈与を活用した相続税の節税

暦年贈与

贈与税には、受贈者(財産をもらう者)一人につき年間110万円の基礎控除があります。  

つまり、110万円までの贈与は非課税になり、その制度を利用して毎年財産を移転していくことを暦年贈与といいます。

ただし注意事項もあります。

例えば、「今年から10年間、毎年100万円ずつ贈与する」という約束(契約)の下で贈与を行うと、1年間のうちに一括で1,000万円を贈与したとみなされ、非課税枠を利用した節税メリットを享受できなくなります。

相続時精算課税制度

①制度の概要

生前に行う贈与には2種類あり、一つは上記で述べた110万円の基礎控除を適用した暦年贈与、もう一つは「相続時精算課税制度」です。

相続時精算課税とは、60歳以上の父母または祖父母などから18歳以上の子または孫へ贈与する際に2,500万円まで贈与税が非課税になり、2,500万円を超える部分について税率20%の贈与税が課されます。

ただし、この制度を適用して引き継いだ財産については、相続発生時に相続税の課税対象として足し戻すので、完全に課税を回避することはできません。

また、一度この制度を適用すると先に説明した110万円の基礎控除を利用する「暦年課税」を選択することはできなくなります。

②当制度のメリット

当制度は相続税の負担軽減にはなりませんが、生前に、しかも短期間のうちに一括で贈与したい資産がある場合には有効です。

さらに被相続人(亡くなった方)の相続財産全体が相続税の課されない範囲内であれば、無税で生前に贈与を済ませることができます。

また、当制度で受贈した土地や建物については、相続時に足し戻す際の評価額は、贈与時の評価額となります。

よって、土地や株式など生前と比較して将来の相続時に値上がりしそうな資産については、その値上がり分については節税効果が見込めます。

ただし逆も然りで、将来値下がりした場合も、贈与時の高い評価額で相続税を計算することになります。

複数のメリットとデメリットがあるので、当制度を適用する場合はよく検討して選択する必要があります。

贈与の特例(非課税制度)

①住宅取得等資金の贈与

当制度は、自分の子どもに対して住宅取得のための資金として最大1,000万円までの贈与が非課税になる制度です。

子供夫婦がそれぞれの親から1,000万円ずつ贈与を受ければ合計2,000万円の住宅取得資金が無税で確保できます。

ただし、この制度は令和4年4月1日現在のところ2023年12月末までの期限付きとなっていること、贈与を受けた年の翌年3月15日までに引き渡しを受けて居住開始することなどの要件があるため、利用時期は慎重に検討しましょう。

また、贈与できるのは「取得するための資金(現金)」であって、自宅である土地・建物を直接贈与することはできません。

そのほか、適用する住宅や受贈者についてもいくつか要件があるため、注意が必要です。

②教育資金の一括贈与

孫や子などが、祖父母や両親などから教育資金の一括贈与を受ける際に、1,500万円までは贈与税が非課税になるという制度です。

対象となる受贈者は30歳未満の子や孫で、贈与者はその直系尊属(親や祖父母)に限られます。

また、教育資金の非課税制度は暦年贈与と併用することが可能ですので、1,500万円を一括で教育資金として贈与したあとに、年間110万円以内の範囲で少しずつ財産を贈与していく、というような贈与計画も可能となります。

ただ、贈与された子や孫が30歳になるまでにその資金を使い切った際は贈与税はかかりませんが、30歳になった時点で教育資金を使い切っていなかった場合には、その残金に対して贈与税がかかることになります。

また、教育資金の非課税制度を適用している途中で贈与者が死亡した場合は、教育資金口座の残額が相続税の対象になります。

この制度も2023年3月31日までの期限付きであること、受贈者の前年所得が1,000万円未満であることなど、いくつか注意が必要です。

③結婚・子育て資金の一括贈与

孫や子などが、祖父母や両親などから結婚や子育て資金として贈与を受ける際に、

1,000万円までは贈与税が非課税になるという制度です。

このうち結婚のための費用は、300万円が限度額となります。

対象となる受贈者は18歳以上50歳未満の子や孫で、贈与者はその直系尊属(親や祖父母)に限られます。

受贈者が50歳になった時点で結婚・子育て資金に残額がある場合は、その残金に対して贈与税がかかることになります。

また、結婚・子育て資金の非課税制度を適用している途中で贈与者が死亡した場合は、結婚・子育て資金口座の残額が相続税の対象になります。

この制度も2023年3月31日までの期限付きであること、受贈者の前年所得が1,000万円未満であることなど、いくつか注意が必要です。

生命保険を活用した相続税の節税

相続税を極力抑えたい場合は、生命保険の活用を検討しましょう。

生命保険は、保険の対象となる人(被保険者)が亡くなったときに、受取人に対して死亡保険金が支払われます。  

生命保険の死亡保険金で、契約者(保険料の負担者)と被保険者(亡くなった人)が同一人物で、受取人は相続人の場合は、相続税法上「みなし相続財産」となり、相続財産に組み込まれて計算されます。

つまり、生命保険の受取分にも相続税が課されるということになります。

しかし、生命保険には「非課税枠」というものがあり、具体的には「法定相続人の数×500万円」まで、相続財産である保険受取金から控除することができます。

例えば、法定相続人が4名いる場合は、2,000万円(500万円×4名)までの保険受取金については相続財産に含めないこととなり、その分相続税を抑えることができます。

keyboard_arrow_up

0988638648 0442461151 0488716940