某タレント事務所問題で話題の「事業承継税」について

 2023年も残りわずかとなりました。東京都心では11月初旬にもかかわらず気温が10度を下回り、慌てて冬支度を初めて方々も多いのではないでしょうか。STCグループが事務所を有する沖縄県でも、ひんやりとした秋風を感じるようになったとのことで、1年の終わりを感じるのと同時に、年の瀬の到来をひしひしと感じております。インフルエンザ感染の報告も増えてきておりますが、体調管理に気を付け、季節の変わり目を乗り越えましょう。

 さて、法人の後継者問題解決の一助として創設られた「法人版事業承継税制」の申請期限が2024年3月31日(特例措置のみ)と期限が差し迫る中、某タレント事務所のスキャンダルをきっかけに当制度に興味を持つ方々が多くなったことから、今回、「法人版事業承継税制」をご紹介させて頂きます。

某タレント事務所のスキャンダルと法人版事業承継税制

 そもそも、なぜあの話題と法人版事業承継税制が話題となったのか。まず、当該事務所のスキャンダルの事実が確定した後、問題の責任を代表取締役Jがどのように取るのかが注目された中、結局代表取締役の地位から退くことなく、また保有株式の譲渡も検討せず、職務により責任を果たしていく、との発表がありました。

 これが、当該事務所の元代表取締役社長がなくなった際に発生した、当該事務所の株式を相続したことによる、巨額な相続税が免除される「法人版事業承継税制」の適用を受けるためではないかと指摘されたのです。つまり、スキャンダルによる被害者の救済の為ではなく、相続税課税を逃れるための代表取締役留任とみられたのです。

「法人版事業承継税制」について

 法人版事業承継税制は、経営承継円滑化法の基、中小企業の後継者の税負担を軽減するための特例措置であり、平成30年度税制改正により大きく改正され、10年間限定の特例措置が設けられました。具体的には、贈与税や相続税の納税を猶予・免除する制度であり、会社の株式等を対象とする「法人版事業承継税制」と、別途、個人事業者の事業用資産を対象とする「個人版事業承継税制」があります(今回個人版事業承継税制は省略)。

 この法人版事業承継税制には、「一般措置」と「特例措置」の2つの制度があります。特例措置については、事前の計画策定等や適用期限が設けられていますが、納税猶予の対象となる非上場株式等の制限(総株式数の最大3分の2まで)の撤廃や納税猶予割合の引上げ(80%から100%)がされているなどの違いがあります。

 「一般措置」と「特例措置」の詳しい解説や、当制度により贈与税・相続税の納税猶予・免除を受ける際の具体的な手続きについては、添付のパンフレットよりご確認頂けます。

〇「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(法人版事業承継税制)のあらまし(令和5年6月)」

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0023006-133_01.pdf

指摘された問題点

 法人版事業承継税制の特例措置による相続税の納税猶予・免除を検討した際、原則として、会社の後継者や承継時までの経営計画を記載した「特例承継計画の提出」を令和6年3月31日までに行い、相続開始後10か月以内に都道府県知事の「円滑法の認定」を受け、5年間代表者であること5年間株式等を保有し続けること(譲渡等を行わないこと)が要件となります。

 某タレント事務所の代表取締役Jの職位留任と保有株式譲渡なしの意向は、上記要件の継続適用の為だったのでしょうか。その後代表取締役Jは、全ての関連会社の代表取締役を退くことが発表されましたが、その場合、猶予取消となることとなる為、相続税がどのくらいの規模になるのか気になるところです。

法人版事業承継税制の有益なご活用を

 法人版事業承継税制は、後継者である受贈者・相続人等が、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続した場合に、贈与税や相続税の納税を猶予・免除する制度ですが、特例措置の適用にあたっては、必要手続きも多く、また長期的な承継スケジュールを立てる必要があり、若干ハードルの高い制度となっております。制度適用の有利不利も一概に判断できない為、当制度にご興味がある場合は、お早目に専門の税理士等にご相談されることおすすめ致します。

〇国税庁HP「法人版事業承継税制」

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/jigyo-shokei/houjin.htm

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